ODA Salon

National Graduate Institute for Policy Studies
 (GRIPS)

「新しい日本のODA」を語る会


 

Last updated 14 September 2006

 コメント紹介コーナー


第1回ODAサロン:幹事による第1回会合の概要
(2006/7/14付け「devforum」にて紹介)

@日本としてのODAの位置づけ、戦略の中身(何のためのODAか)
  • 国家戦略としてのODA
  • 援助戦略 →国家戦略、援助戦略が混同して議論されており、ODAは目的なのか、手段なのか、が曖昧(これは、司令塔の役割を考えるうえでも重要)。日本としてのODAの理念・ 戦略の中身を明確にすることが必要で、そのためにも日本のODAの特徴、強み(弱み)をよく理解しておく必要あり。

A日本のODAに対する理解と発信を強化していく必要性

  • 国民の理解と参加(その観点からの地方自治体、市民社会の役割)
  • 途上国(途上国政府、国民)
  • 国際社会 →@とも関連するが、日本のODAのわかりにくさ、について多くの指摘あり。特に国内的には、ODAは一部の政府関係者と実施機関の関係者による、いわば援助業界の専門家集団がやっていること(ジャーゴンも多い)、との印象をもたれがち。

B援助は途上国の現場から

  • 有効な援助の実施、途上国の政府や受益者を軸足をおいて、日本の現行体制・手続きの何を改善すべきかを考える必要性

C新しいODA体制の構築に向けて留意すべき点

  • 司令塔・外務省・実施機関の役割分担、東京と現地の役割分担、ODAタスクフォースのあり方
  • 単年度制、諸手続き上の制約(煩雑で、迅速的な対応が困難)
  • ODA予算(事業予算と一般会計予算のバランス)
  • 人材育成の課題 →理念や戦略も重要だが、Bとの関連で有効な援助を実施するためのボトルネックを丁寧に取り除いていく必要あり。その観点からも今のチャンスを活かしてODA体制の改革にむけた具体的な議論もしていくべき。

個人的に痛感したのは、援助の現場、途上国開発に情熱をもって携わっている関係者 (予算拡充や現在の体制・手続きを一層改善していきたい、との問題意識を強くもっている)と、日本のODAを支える国民各層(政界、マスメディア、NGO、産業界など)との間で、"Missing Links"があることです。私自身、援助実務に長く携わってきたものとして、(いわば「ODAありき」で)援助国としての日本のODAをどう良くするか という問題意識に駆られて取り組んできましたが、「何のためのODAか、日本としてODAをどう位置づけるか」という明確な基本理念・戦略があってこそ、ODAに対する幅広い理解・発信が可能となり、予算や体制面の改革についても支持が得られるという点を改めて痛感する機会になりました。同時に、援助実務者は途上国開発に強い情熱 をもって取り組んでおり、そういった熱意と努力を国民各層によく理解してもらい、 さらに途上国の現場で効果ある援助をデリバーできるような制度改革に対する支持もとりつける必要があると思います。

ODA大綱改訂のときも議論されたはずで、今さらのような感はありますが、@「何のためのODAか」、Aその観点から現在の体制・手続きで改善すべき点は何か、については、それぞれの立場、国民各層によって様々な見方があると思います。そういった様々な見解を整理し、認識共有したうえで、そして各層で行動できる立場にある方々が、Bより良いODAのための改革・改善を実現するためにとりうるアクション、チャネルは何かを考え、具体的な行動に移していくことも重要だと思います。この点について、ご意見あれば歓迎いたします。


コメント

「devforum」で議論された内容を、本会合の幹事にて要約したものです。

最終的には途上国現場での「結果が勝負」であり、開発成果をだせるような現場重 視と国別アプローチの強化が重要。 ただし、
  1. 「よい結果」を出し、内外(途上国・国内・国際社会)に伝えていくための体制・手続き等で制約がある場合には、それらをしっかりと議論し、改善・整備していく必要あり。  
  2. 短期的には「よい結果」がだしにくいが、開発のための社会基盤づくり等、長期的視点から支援が重要な国(アフガニスタン等、脆弱国家)もある。
  3. 加えて(これは私達の考えですが)、そもそも、日本が全ての途上国の開発問題を解決することは現実的に困難であり、日本が重点的に取組む課題、重点支援国、援助アプローチ、使うチャネル(マルチ、バイ)等もよく考える必要あり。

これらを含む主要な点について基本戦略を共有したうえで、実施機関や現地に権限 委譲する体制が必要(「戦略共有・自律分散協力系」)。

なお新JICAの誕生を控え、JICA職員(現在のJBIC円借款担当職員を含む)が努力してより良くしていく部分と、施策として政府を巻きこんで改善していくべき部分あり。

幹事からのコメント

2006/7/25

本会を自主的(勝手連的?)な、セカンドトラックの活動、という考えは非常に注目すべきだと思います。次回以降の進め方は検討中ですが、ここ暫くは、参加いただいている各層からシリーズで、@「何のためのODAか」、A「その観点から現在の体制・手続きで改善すべき点は何か」、B「より良いODAのための改革・改善を実現するためにとりうるアクション、チャネルは何か」について徹底的に議論する時期(いわば、「ODAマニフェスト」集中討論期)と位置づけて、ODAをめ ぐる様々な見解のマッピング、全体像の整理・共有、そしてイシューの特定化を行うのも一案かと考えています。(話は飛びますが、昨日、訪日中のDFID関係者から最近でた「白書」第三弾を流れる思想について話を聞く機会がありましたが、イギリスに おいては国民の理解に加えて、政策・政治イニシャティブの重要である点を改めて痛感しました。"Missing Links"の観点から、DFIDの経験を事例分析するのも興味深いと思います。)

2006/8/24
9:58

種々の議論がなされている様で楽しみです。ガーナでの議事録も興味深く拝見しました。

ODAの意義やどのように国民の理解を得るかといった議論は、本当に多くのところでされてきましたし、意見は出尽くしたという気がしています。 それでもODA大綱は焦点を絞りきれないという状況でしょう。これ以上の議論でクリアーな答えを出す努力よりも、途上国の人が本当に感謝し彼らの現状が改善される(彼らのセンスで)協力を一つずつ実現してゆくべきではないでしょうか。 その結果、日本が国際社会で評価される姿が日本国民にも見えてくれば、基本的な議論には自ずと答えが出てくるのだと思います。

残念ながら高邁な議論の陰で、必ずしもODA事業の成果は今も満足できる状況ではない様に感じています。

本当に感謝され途上国の人から日本が評価を受けられるような事業(プロジェク ト、プログラム)は実施されているのでしょうか。NGOを通じた支援が重要といわれますが、NGOが実施すればよいというものでなくNGOがどのように事業を展開し成果を挙げたかが重要です。 また、JICAの技プロやコミュニティー開発支援無償の実施メカニズムは、関係者全員が満足できるようになっているでしょうか。 JICAや外務省のみがコスト削減効果や住民参加を評価していますが、途上国の政府、住民、技プロを受注する民間企業やNGOの意見はどうなのでしょうか。 是非そのような視点での議論も進めていただければと希望します。


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