ODA Salon

National Graduate Institute for Policy Studies
 (GRIPS)

「新しい日本のODA」を語る会


 

Last updated 24 November 2006

 コメント紹介コーナー


第3回ODAサロン:幹事による第3回会合の概要
(2006/10/27付け「devforum」にて紹介)

経団連・林氏・吉村氏/ECFA三科氏からのキックオフご発言

経団連とECFAからの共通メッセージとして、@日本の援助理念・戦略として、経済成 長支援と人道支援の両軸を追及(特に前者については、アジアでの成功体験をふまえ た「ジャパン・モデル」の構築を含む)、A新JICAが実施機関として機能するための 制度設計の重要性(3スキームの一体的活用、政府と実施機関との機能分離、現場 ニーズの変化に対応できる実施体制など)、BODA実施の重要な担い手である民間企 業との連携強化(「三層構造」でなく、担い手としての企業を含めた「四層構造」の 発想を)、が特に印象に残りました。

意見交換、質疑応答

@権限委譲のあり方、現地体制の抜本的強化の必要性

  • 権限委譲は(i)政府と実施機関、(ii)東京と現地、(iii)現地(ODAタスクフォース を含む)における大使館と実施機関という3レベルで具体的に考える必要あり。
  • 「権限」と「責任」は表裏一体。新しい実施機関は、結果への「責任」をより一層 求められる。(政府と実施機関との関係も、事前チェックから事後の「成果」ベースでの評価へ)。
  • 権限委譲はバイ援助の話。そもそもマルチ・バイ援助の使い分けについて明確な戦略性をもつ必要あり。現行体制はその機能が弱い。

――なお、(ii)の現地への権限委譲については、途上国ニーズへの対応、政策対話・援助協調の最前線という意味で重要との了解のもと、現地ODAタスクフォースのあり方や現地体制の抜本的強化の必要性について以下、議論。

  • 現地ODAタスクフォースの機能は国によりバラツキがある。現状は大使館の人員体制を含め、俗人的要素が左右。
  • ODAタスクフォース方式は、現行体制のもとで改善をめざした「過渡期」のシステム。
  • 大使館か、実施機関かという前に、現場で政策対話を主導できる人材層が薄いなか、All Japanで組織間の垣根をこえて適材適所に人材配置していくことを優先すべし。
  • 現地への権限委譲は、人材育成・動員のあり方を含めた現地体制の抜本的強化を図ることが大前提となる点を関係者は強く認識すべし。

A「日本らしいODA」とは?、それを発揮するために何が必要か

  • 新JICAにはミニ・マルチ機関でなく、バイの援助機関としての強みを発揮してほしい。そのためのビジネスモデルを構築すべし。
  • 日本企業がもつ技術力(例えば、環境、省エネ)は、「日本らしさ」の構成要素。
  • アジアでの成功例に基づく「ジャパン・モデル」による成長支援、及び日本企業の技術力は重要だが、それ以外にも「日本らしさ」を求めてよいのでは。平和構築、地球規模問題への取組みでも貢献できるはず。
  • 商品開発能力と対外発信能力を強化する必要があり、そのためには新JICAを研究機能の強化が必要。
  • 3つのスキーム(無償・技協・有償)の案件採択・実施方法などの手続き上の違いが、「日本らしい」ODAの実現を含め、より良い開発援助政策を展開するうえでボトルネックにならないよう制度設計で十分留意すべし。
  • プロジェクトマネージャーの集団なのか、専門家集団・実施部隊なのかを含め、新JICAが求める人材像を明確にすべし(例えば、世銀は前者)。

B「四層構造」を機能させる前提としての規律的側面

  • 企業は重要な担い手だが、ODAに対する国民の信頼回復のためには不正を未然にチェックする仕組みづくりが必要。
  • 日本企業の技術力に期待するが、過去、企業の短期的利益のためにODAが実施されて成果があがっていない事例がある点は企業側も認識して、今後取り組むべし。

雑感

以上、幹事の一人として(私見も入った)速報です。2008年を年頭においた取り組み、ODAに対する国民理解を深めるためにも、「日本らしいODA」について、devforumを含め、引続き議論していく意義は大きいと感じています。また、権限委譲については、どのレベルで、何を、どこまで、といった視点も含めた突っ込んだ議論も必要だと思います。議事録ができましたら、ODAサロンのWEBに掲載いたしますが、いつものように、随時、ご意見を歓迎します。



コメント
会合出席者からのコメント

2006/11/18
0:09

議事録を掲載直後にコメントをいただきました!

  1. 開発途上国をネクストマーケットとする視点が必要
    昨今のビジネスでは、開発途上国を巨大なマーケットとする視点がある。C.K プラハート著「ネクスト・マーケット」など貧困層は実は巨大な数の顧客なのだという考え方である。グラミン銀行などは貧困層をターゲットとして、成功している。今後は発想を変えて、貧困層に利益となり、企業にとっても利益となる視点を持つべきではないか。
     
  2. シンプルで判りやすいビジョンの決定
    「キャラが立つ」は非常に面白い発想である。ある意味シンプルで誰にもわかる形のビジョンを確立し、商品開発能力と対外発信能力を強化していく。環境、省エネ、平和構築、人間の安全保障などいろんなコンセプトがあるが、対日本国民、対外的にもシンプルで誰にも判りやすいビジョンの決定が必須。
     
  3. 適材適所は誰がどのように決定するか
    人材が不足している中、人材のストックを持ち、適所に配置することは重要であるが、どの組織がどのような形で配置するのかが不透明である。現状のままでは、俗人的な要素が大きい。
   

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