ODA Salon

National Graduate Institute for Policy Studies
 (GRIPS)

「新しい日本のODA」を語る会


 

Last updated 18 January 2007

 コメント紹介コーナー


第5回ODAサロン:幹事による第5回会合の概要
(2007/1/13付け「devforum」にて紹介)

【脇阪氏と今里氏の冒頭発言のポイント】

共通する問題関心は以下のとおり。

  • 報道する側の問題として、ODAを専門とし総合的に論じる記者の層が薄い(「ODAは隙間産業」?)。政治部(国益、対中援助)、経済部(予算、財政当局との攻防)、社会部(癒着や無駄遣い)等により関心が異なるし、一般的に外務省の霞クラブの記者は異動が速い。

  • 他方、近年は安全保障、人道的観点、貿易投資、PKO、移民政策等を含めてODAを総合的に考えていく必要が増加。

加えて、脇阪氏から、「ODA」という用語の妥当性を問いかけるとともに(←政府が予算増加のツールとして用いた会計概念に過ぎない?)、より身近に感じられるキャッチフレーズをつくる必要性を強調。今里氏からは、ODAの司令塔ともいえる海外経済協力会議について、@議論の内容が公表されず密室性が高い、A全参加閣僚がODA政策に明るいとは限らない、B閣僚は1〜2年で交代し、政策の継続性、一貫性を確保することが難しい、といった問題点が指摘されるとともに、ODAを支持する政治家を増やす必要性が強調されました。

【意見交換・質疑応答】

  • ODA報道体制のあり方

    1. ODAの現場は海外。東京だけでなく海外特派員の役割が大きいのではないか。
      → 海外特派員は、途上国の現場を見る機会に恵まれているのは確か(脇阪)。他方、政策レベルの話は東京で取材せざるをえない場合もあり、バランスが大切(今里)。

    2. 国会議員の関心、特に議員の地元である地方で国際協力の関心を高めていくことは重要。そもそもODA報道は世の中に出る頻度が圧倒的に少なく、テレビの討論番組でも国際貢献が議論されないという問題あり。

    3. 市民の立場からは「チェック&バランス」をメディアに期待。NGO等が指摘するようなODAの様々な問題点についても、メディアが両論併記で取り上げることも必要。
      → いわゆる「会計検査院的メディア」は淋しい。メディアは建設的役割を果たすべきで、チェック&バランス&クリエイティブが大切(脇阪)。

  • 「ODA」という用語の妥当性、より身近に感じてもらうには?

    1. 「ODA」に焦点を当てるか、「開発」に焦点を当てるか。開発のためにODAを使うというコンセンサスをつくり、正攻法の広報が必要。メディア、有識者、国民の三者に対し連携してアプローチすべき。
      → 「開発」で行くべき。「ほっとけない」のようにひらがなで説明できればベター。「現場で見せる」もの、「絵」として見せるものが無いとアピールできない(脇阪)。ODAについて社説を書くと読者から「日本にもホームレスがいるのに、どうして外国に援助しなければならないのか」という質問が多く寄せられる。人道的な面は、スポーツ選手やタレント等を使って感情に訴えていくことの効果は高い。一方、国益についてはまじめに訴え続けていくしかないであろう(今里)。

    2. ODAはDACの定義にすぎず、目的別に整理し直したら如何。例えば、人道目的のものは「贈与」とし、開発目的のものは「プロジェクトファイナンス」と整理し、「脱ODA」を図るべき。
      → 「開発」と「人道」とは分けられないのではないか。例えば、アフリカでは経済成長が最大のAIDS対策という側面もある(今里)。

  • 政府や実施機関の広報体制のあり方

    1. ODA関係者が「井の中の蛙」になっているのではないか。他の分野(産業界、NGO、地方自治体等)との連携が乏しく、閉鎖的だった傾向がある。このような状況では、いくら美しい言葉を並べても国民に理解されない。他の分野、世の中の事象に合わせた広報アプローチを考える必要あり。

    2. 世界銀行ではPublic Relationsのスタッフが非常に多い。これら広報スタッフの役割は、つきつめれば幹部の言葉をHumanize(身近に感じさせる)ことだと思う。

【雑感】

今回は新聞社のお二人にお話を伺いましたが、ODAに対する国民と政治家の理解を得るという意味で、@報道する側、A政府・ODA実施機関側ともに、抱えている課題が少なくないことを痛感しました。グローバル化が進み、政策一貫性が活発に論議される中で、総合的視点、そして日々の普通の生活との関わりという視点からODAを報道、広報する体制をいかに強化していくか。また、@「ODA」という用語だけに依存せず、もっと身近に感じてもられえるキャッチフレーズを作る必要性、A政府や実施機関の政策や幹部の言葉を分かりやすく説明する努力や、B途上国の人々が直面している貧困・開発問題と私たちの日々の生活とがどのように繋がっているのか等を事例を含めて具体的に説明していく努力の必要性、といった3つのレベルでの課題を感じました。政府・実施機関として既存のメディアに限らず、新しい媒体(例えば広告代理店)を積極的に活用していく可能性も検討に値するかもしれません。ただし、そのためには、発注側が発信したいメッセージの中身を明確にもっていることが大前提になりますが・・・。

 


コメント
会合出席者からのコメント

2007/1/16
13:58

マスコミの2人の発表を興味深く伺いました。

ODAサロン幹事からDevforumへ送付された報告に付け加えるとすれば、以下の点かと思います。

  • 政治家はODAに関心を有していない。ODAは票にならない。なぜなら、選挙民がODAに関心が無いからだとの指摘があった。政治家へのアプローチが必要とのコメントが会合ではあった。
  • マスコミの方から、一般市民向けのODA情報発信では、新聞の影響力よりもテレビ、特にタレント、スポーツ選手が海外訪問した番組の方が訴える力があるとの発言があった。(なるほどと、感じました。)
  • マスコミ、フロア双方のやり取りで、ODAをより市民に身近に感じさせるには、中央の報道よりも、地方紙が取り上げる地元ネタの方がインパクトがあるとの指摘もなされた。
  • マスコミの方から日本人が開発により関心を寄せるためには、教育現場で開発がもっと取り上げられる必要があると指摘があった。
   

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