ODA総合戦略会議(第15回)
以下は、2004年5月24日開催の第15回ODA総合戦略会議に委員として出席した大野健一(GRIPS)の個人的なまとめと感想である。公式議事録の発表前に関係者に報告をすることは、日本の外交に差し支えのある内容を除いて、各委員の判断で実施して構わないという合意(第2回会合)に基づき報告するものである。川口外相(議長)は欠席。
主要議題: インドネシア(中間報告)、国別援助計画策定国の追加など
浅沼委員より、インドネシアの国別援助計画策定の中間報告があった(現在第2稿、各省調整中)。アジア危機後のマクロ安定が確保された現在、まず「当面何が必要か」を念頭に、政策のインパクトラグも考慮しながら作業をした。最重要項目として、低成長・失業・投資危機の悪循環を突破するために、またこれまで得られた貧困削減成果を後戻りさせないためにも、民間投資環境の改善を優先する。第2に、より長期な課題として民主的で公正な社会造りの支援(教育・医療、ガバナンスなど)。第3に、平和と安定のための支援。
追加として、現地タスクフォースの秋元インドネシア公使より、4000万の貧困、2200万の失業の中での民間投資の重要性が再度強調され、またインドネシアの援助ニーズの変遷(地方分権、市民社会・住民参加など)に対応するわが国の援助手法開発の必要性が述べられた。
大野は、@インドネシアの場合、政治不安定という日本にとって不可抗力の不確実要因があるが、その帰趨によって援助の中身・量をかえることはしないのか、A投資政策の一貫性を先方政府から引き出し担保するためのメカニズムはあるか(ベトナムでは政策の質により援助額の方向性をかえる、日越共同イニシアティブ、先方政府との対話強化などがある)、と質問した。これに対して、日本のエコノミスト等と先方の官民代表からなる「経済政策支援チーム」、大使館の政策対話、ODA有識者懇談会などのチャネルがあるとの回答あり。渡辺議長代理は、浅沼報告は非常に一貫しているが、先方政府にも十分な政策一貫性がのぞまれる、「経済政策支援チーム」に政策モニタリングのオフィシャルな機能があるとなおよいと述べた。
他に、@これまでの制度構築支援が(他のドナーも含めて)成功していなかったのではないか、また技術支援も散発的であり体系的でなかった、A地域・所得格差をODAを使って是正すると書き込むべき、B過去のODAのプラスの成果・マイナスの面をはっきり書くべし、C民間支援が大企業支援になってはならない、D日本・インドネシア間の市民社会の協力を支援すべし、といった意見が出た。
事務局より、以下の9カ国をこれから2年ほどかけての国別援助計画策定・改定の追加対象国とする提案があり、説明と質問がおこなわれたのち、承認された。新規策定国:ラオス、エチオピア、ウズベキスタン、カザフスタン(後2国については同一チームで策定する可能性もあり)。改定国:タイ、フィリピン、バングラデシュ、ガーナ、エジプト。
牟田委員より、ODA中期政策(1999-2004)の評価結果、および次期改定についての位置づけと役割についての報告があった。これに対して大野は、かなり詳細な新ODA大綱ができ、また各国の国別援助計画が策定・改定されている現状では、ODA中期政策はもういらないのではないか、むしろ援助に関する重要テーマを1つずつ選んで分析・議論する年次報告など、国民や援助関係者の対話を活性化しうる新文書が求められているのではないかと述べた。
事務局より、イラク・アフガニスタン支援の現状、国際協力50周年事業、円借款供与国の経済財政事情について報告があった。また本会議委員の任期(2年)は本年6月末に終了するが、各国ごとの作業・議論が継続しつつあるところ、既存委員の延長の可能性を視野に検討したいとの報告があった。これに対しては、NGO側の委員から、同一人物が継続していいかの議論もあるとの発言があった。