ODA総合戦略会議(第16回)
以下は、2004年7月22日開催の第16回ODA総合戦略会議に委員として出席した大野健一(GRIPS)の個人的なまとめと感想である。公式議事録の発表前に関係者に報告をすることは、日本の外交に差し支えのある内容を除いて、各委員の判断で実施して構わないという合意(第2回会合)に基づき報告するものである。川口外相(議長)は欠席。
主要議題: インドネシア(最終報告)、パキスタン(中間報告)、中期政策など
浅沼委員より、インドネシアの国別援助計画策定の最終案が報告された。過去の支援は成果を挙げたが、制度構築(ガバナンス、行革、銀行等)の面で不十分であった。他のドナーがガバナンス・貧困に集中するなかで、日本は抜け落ちている関心である「雇用のための成長加速」「投資環境の整備」を重点としたい。具体的にはインフラ、中小企業、法整備など。また安定・治安、各パートナーとの連携を重視する。大統領選挙が控えているが、誰が勝ってもこうした路線は支持されるであろう、ということであった。これに対しては、短期・中期・長期の課題の分け方について、ガバナンス・制度構築の実行可能性、投資環境に加えて産業ビジョンの要不要などについての質問が出された。ある委員はガバナンスを重視せよといい、他の委員はむしろ産業インフラ(電力など)を重視せよとした。これらの意見を踏まえながら改定するが、それをもう一度本会議にかけずに完成とすることが承認された。
平島主査より、パキスタンの作業の中間報告がなされた。同国を支援する理由は地政学的(9・11以降、テロの温床となることを防ぐ)、プラス、社会問題にかかわるもの。中長期の持続的社会発展を目標に、@人間の安全保障、A健全な市場経済(農地改革が最も肝要だが政治的には無理)、Bバランスのとれた発展、をめざす。これに対しては、用語が専門的で国民にわかりにくい、人間の安全保障も横断的イシューに入れるべきといったコメントあり。
将来、国別援助計画を策定する国(9カ国)のうち6カ国について、以下の主査が承認された。タイ(末廣昭)、バングラデシュ(山形辰史)、エチオピア(高橋基樹)、ガーナ(大野泉:GRIPS)、ラオス(原洋之介)、エジプト(山田俊一)。なおフィリピンとウズベキスタン・カザフスタン(2国いっしょ)については未定。
ODA中期政策の改定案について、児玉審議官より説明あり。主な論点を「人間の安全保障」「成長を通じた貧困削減」「平和構築」とする。ただしODA大綱に記述されているが中期政策にないテーマの重要性を否定するものでは一切ないとのこと。2005年1月をめどに作成する。これに対しては、このトピックに賛同するという意見もあったが、東アジア連携や日本の安全・繁栄といった大綱で謳われた課題はどこに行ったのか、成長を通じてであれ直接支援であれ貧困層にのみ焦点を当てる開発は狭すぎる、立派だが国際機関向けであり二国間援助政策としては偏っているといった意見あり。大野は、「単に新概念を説明する目的ならば解説マニュアルであり政策文書とはいえない。また状況はすぐ変わるので、少数の問題だけとりあげ策定して5年も堅持するというやり方は有効でない。中期政策がそもそも必要か、その名前・枠組でよいかも含めた議論が欲しい。国別計画はすでにあるから、もし横断的イシューを1つずつ掘り下げて文書化し、それを集めたものを日本の政策とするというのならば大いに賛成する」と述べた。さらに、やはり中期政策は作るべき、そのトピックは絞るべき、5年ではなく3年を周期とすべきなどの意見があった。渡辺議長代理は、草野委員をタスクフォース主査として叩き台をとりまとめてもらうよう提案した。
シーアイランドサミットについて事務局より説明あり。
今回より瀬戸、宮原、西岡委員が抜けて、関山(日本貿易会)、米山(日本経団連)の2委員が加わった。ただし米山委員は欠席。次回は9月下旬を予定。