ODA総合戦略会議(第17回)
以下は、2004年9月27日開催の第17回ODA総合戦略会議に委員として出席した大野健一(GRIPS)の個人的なまとめと感想である。公式議事録の発表前に関係者に報告をすることは、日本の外交に差し支えのある内容を除いて、各委員の判断で実施して構わないという合意(第2回会合)に基づき報告するものである。川口外相(議長)は欠席。
主要議題: ODA中期政策、モンゴル、タイ、ガーナなど
児玉審議官および草野委員より、 新中期政策策定についての検討結果の報告があった。ODA大綱の4重点課題を踏襲し、それぞれの具体的取組を書く。それと同時に人間の安全保障・貧困削減についてはより具体的な解説を加えるとのこと。これに対しては、ODA大綱以上に政策目標を書き込むものか、単なる解説文書なのか、といった中期政策の性格についての質問・コメントが複数あった。審議官からは、その中間のガイドライン的文書という説明あり。そのほか、大綱と個別国計画のギャップを埋めるガイドであるべき、評価方法を書くべき、人材・教育をハイライトすべき、国民・予算への説明を重視すべき、5年期限は長すぎる、といった意見も出された。また人間の安全保障は案件に落とせる具体的課題というより、援助を貫く考え方であるという指摘もあった。事務局は、今回の意見を咀嚼した上で次回までに原案を作るとのことであった(最終完成は来年1月予定)。
モンゴル国別援助計画の最終案が花田主査より提示された。関係者の共同作業によりコンセンサスを得たこと、北東アジア統合の視野を持つことなどが強調された。大野は分量的に、現状分析(現15頁)と比べ援助方針(現5頁)が少ないのではないか、国際統合と牧畜重視は本当に整合的なのかときいた。詳細分析・数字が多すぎるという意見は他委員からも出された。一方援助方針の中で、たとえば環境、インフラの具体的中身は何か、といった質問も出された。牧畜については花田主査、砂川委員から重要であることが強調された。現状分析が長いのは、多くの人に実態を知ってもらいたいからとのことであった。
タイ国別援助計画の作業方針が、末廣主査から説明された。タイは中進国として被援助国ではなくパートナーとしての扱いが求められていること、地域・グローバルな観点からの日タイ強力を構築せねばならないことが強調された。大野は、さらに踏み込んで「援助卒業」を前面に打ち出せばどうか、とはいうもののタイの工業力はまだ不十分で彼らのプライドを保つような協力(ODAに限らず)は必要と述べた。卒業を視野に入れた国という点で他の複数の委員も関心を示し、新しい協力モデルの模索に期待した。ただしまだ貧困・格差などの問題は残っているという指摘もあった。末廣主査は、ODAをやめると宣言するのはまだ早いのではないか、またタイではもう人間の安全保障といった概念で協力することはやりにくいと述べた。
ガーナ国別援助計画の作業方針が、大野泉主査(GRIPS)から説明された。欧米・国際機関の援助戦略の最先端であるアフリカ、とりわけガーナでは、HIPC・債権放棄、PRSP、援助協調、プログラム型支援などの多くの課題があること、日本のODA減額のもとでアフリカ支援をどのように位置付けるかを検討すべきこと、現地主導型・農業を含む生産セクターへの取り組みが重要であることが述べられた。これに対しては、他国の国別援助計画作業にも共通するが、事務局にて過去の問題をまとめておいて欲しい、新援助方式への対応のみならず生産セクターへの注意が重要、政情不安の可能性に対するリスクマネジメントがいるのではないかといった意見が出された。政情不安について大野主査は、ガーナは民主的に政権交代を実現した国であり、大統領選挙が12月に予定されているものの開発政策の方向に大きな差はなく、リスクは低いと思われる旨、述べた。
フィリピンは吉田恒昭氏(東大)、ウズベキスタン・カザフスタンは石井明氏(東大)が主査になることが承認された。またそれ以外の国の策定状況・予定が報告された。
外務省ODA予算概算要求、ODA白書、国際協力50周年に憑き事務局より報告があった。次回は11月はじめを予定。