ODA総合戦略会議(第3回)
以下は、2002年9月13日のODA総合戦略会議(第3回)に委員および報告者として出席した大野健一(GRIPS)の個人的なまとめと感想である。公式な議事録は別途外務省から発表される。
まず外務省の西田経済協力局長より最近の動きとして、@ODA予算要求、Aヨハネスブルグサミットの結果、Bインドネシアのコタバンジャン・ダムにおける対日提訴、Cモンゴルの贈賄事件、について説明があり、委員の意見交換が行われた。
複数の委員より、本会議の発言・討議時間が少ないこと、ゆえに@外務省からの近況説明を短くすること、A会議の時間をたとえば30分延長すること、B事前の資料配布・ファクス等による意見交換をすること、C個別問題を集中的に討議する別のフレームワークを作ること、などの提案があった(とくに具体的決定はなし、渡辺議長代理は検討を約束)。
大野がレジュメに沿って、ベトナム国別援助計画改定に向けての提案を行った。その骨子は以下の通り。
--この提案は昨年来、ベトナムの知的支援を強化するために行っている活動の延長であり、東京・現地の関係者とも十分議論している。ただし内容の責任はすべて大野にある。
--ベトナムは成長と社会的公正をともにめざしており、この開発目標については日越政府が合意ずみ。また世界の開発潮流は貧困削減のみから成長関心へとシフトしつつあり、これは日本が主導権をとるにはよい環境である。
--パートナーシップはもはや「対応」するものではなく、すべての支援がその中で行われなければならない。バイの援助もすべてその枠内で行い、しかも日本らしい成長関心でその中身を変えていくべきである(社会セクターにも参加する)。
--作業は現地主義で行うべし。その主体として、現地の大使館・実施機関とそれをサポートする「開発戦略チーム」を提案する。両者が協力して、途上国・ドナー・東京との情報交換と政策討議を行う。大使館と「チーム」の責任分担は国ごとに決める。
--国別援助計画は@外交分析(援助目的)、A開発分析、B実施・援助協調の基本原則、の3つを含まねばならない(具体的な章立ては別)。そのもとに、JICA、JBIC、各省庁の援助実施方針が統合されるべきである。
--1年間を改定期間とする(ベトナムより情報が少ない国ではもっとかかる可能性あり)。ODA総合戦略会議は、その指針を指示するとともに、適宜報告を受け、必要事項を検討する。
以上に対して、委員の大部分は大枠において賛意を表明した。もっと深い開発分析(成長戦略・社会セクターともに)が必要であること、現地・日本のNGOとも連携することについては同意があった。パートナーシップについては、日本が主導する形での積極参加が必要であることについて、意見が表明された。
実施に際しての制度上の問題として、@ODA総合戦略会議と現地(大使館・実施機関+「開発戦略チーム」)の関係、A外務省が提案している国内タスクフォースと現地タスクフォースからなる体制の是非、A本会議委員が各国の国別援助計画の委員を兼ねることについて、などに多くの質問があった。大野の見解は、現地主義の実現、組織・手続きの簡素化、重複回避のために、すべての実質的作業を現地で行い、国内には別個のタスクフォースを設けず、ODA総合戦略会議が上部機関として指令・コメントにあたるというものである。この件については閉会後も議論が続いた。渡辺議長代理の提案により、本日は決定せず、実施しながら次第に体制を固めていくこととした。
JICA、JBICを通さない各省庁の援助を国別援助計画のもとに全体の整合性をもたせなければならないことに同意。その際、外務省・JICA・JBICに加えて他省庁も国別援助計画の策定に参加させるべしという意見があった。大野は、その際には各省庁が意見を述べる権利を有するとともに、現地主義で決定された方針は遵守する義務を負うものであることを主張した。
ODA大綱を含む、援助の基本原理を将来議論していくことが複数の委員より提案された。これに対して渡辺議長代理からは、これからは@大野を中心とするベトナムに関する組織(名称・詳細は未定)、Aスリランカに関する同様の組織、B援助の基本政策を議論する組織、の3本立てのテーマで議論していくという提案があり、受け入れられた。次回はBの基本政策に関する、ブレーンストーミング的討議を行うことが提案された。
*ベトナム「国別援助計画」改定に向けての提案レジュメ (pdfファイル55KB)