援助協調枠組みの下での成長戦略支援 タンザニアではPRSPプロセスに先立ち、セクター・プログラム的なアプローチが導入されていたが、その実施がPRSPの枠組みのもとで加速している。Full-PRSP(2000年10月)に対する世銀・IMFのジョイント・スタッフ・アセスメントにおいては、農業、地方開発、初等教育の各分野における戦略の早期作成が勧告され、それらの策定作業が本格化した。 日本は、タンザニア経済において成長の原動力である農業の重要性に鑑み、これまでも重点支援分野として取り組んできた経験に基づき、@農業開発戦略(Agricultural Sector Development Strategy: ASDS)、A農業開発計画(Agricultural Sector Development Plan: ASDP)、B地方開発戦略(Rural Development Strategy: RDS)策定を目的としてタンザニア政府とドナー間で設置された作業部会の事務局を務めることとなった。そして、JICA事務所において農業担当の企画調査員とナショナル・スタッフを配置し事務局業務(ドナー・コーディネーションを含む)を行うとともに、その支援のために、以下を目的として「タンザニア地方開発セクター・プログラム支援調査」*1を開発調査として立ち上げた。
農業開発戦略、農業開発計画、地方開発戦略の全体像 調査の流れは上記の図のとおりだが、特にASDPに関しては、事務局の下に設置された策定チームの一員として、戦略の中身について知的支援も行った。一例として、タンザニアにおいて発言力のあるヨーロッパのドナーが、得てして厳格な政策の設定を要求し、実施手法についてもバスケット・ファンドの厳格な適用といった画一的かつ硬直的な内容を主張するのに対し、実施しながら、現実に応じて多様な政策や援助デリバリー方法(モダリティー)をとれる余地を認めるよう議論を形成した点が挙げられる。 本調査は援助協調におけるコーディネーション自体を重要な目的とするが、この調査を通じて、セクター・プログラムそのものや、それに関わる他ドナーの経験に対する理解が深まり、今後、日本がセクター・プログラムに取り組むうえで貴重な示唆をあたえている*2。また、タンザニアの農業セクターへの支援という観点からも、セクターの全体像を見渡す視座を持てるようになり、関係者の活動や考え方についてより深い情報を得る一方、日本の援助の仕組みや考え方を先方に伝える機会にもなり、相互の信頼関係の強化や同国支援における日本の基盤固めにも貢献した。 現在、ASDPの一部が実施段階に入ると共に、ASDPに基づいて更に県レベルでの農業開発計画(District
Agriculture Development Plan: DADP)が策定される段階にある。日本自身が策定に深く関わった計画に対し、どのように整合的に援助を行い、戦略の中で示される開発目標の達成を実現していくのか、今後の日本側の取組みが注目されている。 |
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*1 「セクター・プログラム開発調査」は2001年度予算から認められた新たな開発調査の形態である。その中には@セクター調査、Aドナー会議開催、Bカウンターパートがワークショップ等に出席するための必要経費、Cプログラムの運営とモニタリングのための日本人コンサルタントの現地派遣費、D事務局機能の設置のための国内外の必要経費が含まれ、一案件当たり3
年程度の実施期間が見込まれている。実施段階においては、JICAの地域部と在外事務所の連携のもと、プログラムのモニタリング結果と、相手国及びドナーとの協議を踏まえ、柔軟に資源投入とプログラムの見直しを実施していく必要がある(JICA[2001]「貧困削減に関する基礎研究」) |
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