研究活動フォトニュース
新しいものを上に掲載。
プロジェクト最終シンポジウム(ハノイ・ホーチミン市、2003年9月)
本プロジェクトの最終シンポジウムが9月5日にハノイ、9月9日にホーチミン市で開催されました。各チームの研究成果を順に発表することは避け、過去のワークショップ等ですでに明らかになっている論点(クロスカッティングイシュー)をハイライトし、それらを具体的な産業問題、政策提案、関税スケジュールを通じて議論していく、というやり方をとりました。とりあげられたテーマは、@外資誘致の未解決問題、A裾野産業育成への対立する考え方、B工業化戦略と整合的な関税引下げスケジュール、Cバイク政策の再評価、です。とりわけハノイでは、Do Huu Hao (MOI次官)、Pham Dang Tuat (MOI)、Le Danh Doanh (MPI)、Nguyen Quang Thai (MPI)、 Luu Bich Ho (MPI/DSI)、Pham Chi Lan(PM Research Commission)等の方々の出席を得、半日ながらベトナム側出席者同士での活発な議論がなされました。またホーチミン市では、同市人民委員会、ホーチミン市経済大学、フルブライト経済教育プログラムの参加を得ました。各シンポジウムにおいては、日越双方の研究をまとめたベトナム語の書物(2巻)、関連論文、ウェブ資料等が配布されました。プレスコンファレンスも実施しました。本JICA-NEUプロジェクトは3年を経た本年末に終了しますが、新しい形でGRIPS-NEU共同研究としてその一部は継続される予定です。
ホーチミン市におけるシンポジウム |
ベトナム産業ワークショップ、政策協議会 開催 (ハノイ、2003年3月)
繊維縫製とソフトウェアのワークショップ、並びに鉄鋼(工業省(MOI)、ベトナム鉄鋼公社(VSC))、関税(財務省(MOF))及び電子(通信省(MPT))の政策協議会が、国際協力事業団(JICA)とベトナム国民経済大学(NEU)の主催で3月最終週にベトナム・ハノイで開催されました。MOIとMPTの副大臣及びNEUの学長/副学長らも参加し、GRIPS教授・大野健一が議長を務めるなか、AFTAやUSBTA、WTO協定に伴うベトナムの貿易自由化に向け、よりよい分析と政策提言を打ち出すための話し合いが行われました。
今後は、2003年9月に行われる次回の会合に備え、これまでの政策提言をまとめる予定です。現時点での提言の要約は、GRIPS開発フォーラムの情報モジュール・サイト 「グローバル化時代のベトナム工業化戦略」でご覧いただけます。
またこのワークショップの模様はベトナム・インベストメント・レビュー(3月31日付)及びサイゴン・タイムス(4月1日付)にも掲載されました。
Prof. Le Du Phong (NEU 学長) |
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Mr. Mai Liem Truc (MPT 副大臣) |
Mr. Bui Xuan Khu (MOI 副大臣) |
バイクセミナー開催(ハノイ、2002年12月12日)
ベトナムのオートバイをめぐる状況は、同国の大きな政策課題かつ社会問題となっています。ベトナムバイク産業の重要な担い手である日系企業にとっても、政策一貫性の有無は重大な関心事です。1999年ごろより廉価な中国製バイクの大量流入、それに伴う不正、混雑、交通事故などの問題が発生しました。2002年9月には外資系メーカーに対する部品輸入割当の突然の導入により、複数の組立工場が一時生産停止に追い込まれました。その後部品輸入の追加許可がでましたが、2003年に入ってもバイクをめぐる政策環境は、部品輸入割当・関税体系・完成車輸入許可のいずれをとっても混沌としたままです。
この問題については、日越の政府・民間レベルでも交渉が行なわれていますが、我々はアカデミックな立場から、関係者の率直な対話の場を提供し、中長期の改善をめざしてセミナーを開催しました。Phong国民経済大学学長と北野公使が開会の辞を述べられました。主な議論は以下の通り。
部品輸入割当、ローカルコンテンツ政策、関税体系、中国バイク政策、完成車輸入政策など、多くの面にわたってベトナムのバイク産業をめぐる環境はきわめて不確実・非整合である。ベトナムは将来、輸出競争力をもつ高品質バイクをめざすのか、国内販売用の廉価モデルをめざすのかを含めて、中長期の産業ビジョンが定まっていない。マスタープランも存在しない。
国内部品の供給能力について日越間に大きな認識ギャップが存在する。越側は部品はすでに存在するとし、日本側は現調努力にもかかわらず要求レベルに達するメーカーは少ないとする。これは、汎用部品を組み合わてバイクを作る越側と製品を独立したシステムと考えそれにフィットする部品をオーダーメイドする日本側のビジネスモデルの違いによるところが大きい。
日系組立メーカーは、究極目標としてエンジンを含めた100%の現調をめざしており、またそうでなければ価格競争力はつかない。外資系が国内部品を避けているという批判はあたらない。しかし現在の政策のままでは現調率をそのように引き上げることは不可能である。日本側は、数十年のスパンでベトナムバイク産業がキャッチアップする意欲とビジョンを示してくれることを望んでおり、それに対する協力もするつもりである。
バイク急増に伴う混雑・事故・環境などの問題に対しては、輸入を一時的に止めるといった措置ではなく、都市計画の改善、交通インフラ整備、交通ルールの遵守等システムとしての対応が不可欠である。それについても、日本は協力しているし、する用意がある。
Le Du Phong国民経済大学学長・越側チームリーダー(左)、植田浩史氏(日本側バイク担当)
電子セミナー(ハノイ、2002年11月)
2002年11月12日、ハノイにて日系電子組立企業代表・専門家・関連機関、ベトナム電子企業・関連省庁を集めて、ベトナムの電子産業に関するセミナーが開催されました。Chuan工業省次官と北野公使が開会の辞を述べられました。前半では分析・提言の発表がなされ、後半ではそれに基づく政策討論が行なわれました。このセミナーの目的は、課題を単に指摘するだけではなく、外資・現地双方の電子組立企業にとって差し迫った重大問題を解決するために、ベトナム政府に働きかけることにありました。日本側からの統一要請として、@部品輸入関税の0%化、A現地化要求の撤廃、B部品輸入キット化規制の撤廃、Cマスタープランの作成、の4項目が提示され、これに対して議論が展開しました。日本側は官民を挙げて、この要請に対するベトナム側の積極的対応を強い関心をもって見守り、回答をフォローしていく予定です。 議長サマリー (41KB)
関西セミナー開催(大阪、2002年6月)
2002年6月25日、大阪駅前第2ビルの大阪市立大学文化交流センターでアカデミックセミナーを開催しました。ファム・クアン・トゥ大阪駐在ベトナム総領事から開会の辞をいただき、企業、大学、各種団体などから百数十名の参加がありました。関西の方々のベトナムへの関心は非常に高いようです。本プロジェクトの概要、投資誘致戦略、電子電機、皮革・靴、鉄鋼、機械などにつき、プロジェクトチームからの発表と活発な質疑応答がありました。
プロジェクト概要(ppt)はこちら (56KB)
ハノイシンポジウム(ハノイ、2002年3月)
「国際統合下の工業化戦略」と題するシンポジウムが2002年3月29〜30日に開催されました。在越大使館の強力な支援を受け、また山崎隆一郎大使から開会の辞をいただきました。さらにTran Van Nhung教育訓練次官、Nguyen Dinh Huong国民経済大学長、Le Du Phong同副学長、金丸守正JICAベトナム事務所長、党経済中央委員会、工業省、教育訓練省、財政省、科学技術環境省、商業省、計画投資省、企業グループ、大学、ドナーなどの広範な出席をえました。1日半にわたり6つのセッションが催され、直接投資政策、電子組立、繊維縫製、靴履物、ソフトウェアなどが検討されました。日本側は、直接投資誘致のあるべきシークエンス、鉄鋼各種製品に関する整合的な関税引下げプラン、国内流通制度の欠陥と打開策などを提示しました。シンポジウムを通じて常に論じられた問題は、いかにして現在の単純組立から脱却し、国内付加価値をつけていくかでした。日本側はグローバル化時代の現実的選択として、ベトナムは(動態的)比較優位をもつ工程に特化・専念し、それに熟達することにより付加価値・雇用を生み、それ以外のインプットは外国からアウトソースするよう勧告しました。しかしながら参加者の中には、(必要なら外資の支援を得て)各産業ごとに上流投資を行い、垂直統合された産業構造をめざすべきだという人もありました。この点において、ベトナム側の意見は二分されていたように思います。我々はさらなる研究と説得を通じて、フルセット型ではないダイナミックな国際分業ビジョンをベトナム政府・企業に訴えていく所存です。 英文議事録(pdfファイル106KB)
ベトナム側出席者/Nhung教育訓練次官のスピーチを聞く山崎大使
このシンポジウムは現地の雑誌・新聞に取り上げられました。 Thoi bao Kinh te紙の記事(2002.4.3、英訳)
内部打合せ会議(ハノイ、2001年12月)
シンポジウムは往々にして研究者の一方的発表に終わり、時間不足で十分な質疑・議論ができないことがあります。また各人が勝手ばらばらな研究をしていては内容が深まることもありません。我々はそのような事態を避け、サブスタンスに迫る論争をするために、3月のシンポジウムに先立ち12月に2日間の内部報告会を行い、互いの論文に対して忌憚ないコメント・批判をぶつけ合いました。この議事録は作成しませんでしたが、英越通訳を入れながらも、ベトナムの現実に即し最新理論も踏まえて、エキサイティングな討論をすることができたと思います。国際共同研究の醍醐味といえるでしょう。
第2回鉄鋼集中セミナー(ハノイ、2001年10月)
個別産業研究のうち、最も進んでいるのが鉄鋼です。これはJICA専門家としてベトナム鉄鋼公社(VSC)に派遣されていた田中伸昌氏の協力によるものです。2000年の第1回に引き続き、政府・VSC関係者、日越専門家等を招いて第2回の鉄鋼集中セミナーが2001年10月25日に開催されました。VSCのCuong副社長がホストをつとめ、直前に首相決定として発表された「鉄鋼マスタープラン」を詳細に吟味するとともに、それ以外の政策問題(関税設定など)も検討し、前回と同様、中身の濃いセミナーだったと思います。これからの課題は、我々の見解を政府全体および指導部に浸透させることです。日本側は、マスタープランの不整合・曖昧な点を数字をあげて指摘し、競争力は所与ではなく適切な経営・政策によってつくるものであることを述べ、具体的な技術選択や市場ターゲットの勧告を行いました。
左から、VSCのCuong副社長、田中氏、Son社長
木村・大野のNEU特別講義(ハノイ、2001年9月)
2001年9月10〜12日に、本プロジェクトの木村福成・大野健一が、カウンタパートの国民経済大学で「アジア危機以降の貿易・投資・為替」と題する特別講義を3日間にわたり実施しました。主として大学院生・若手研究者を対象に、ハイレベルで通訳なしの英語で行われました。取り上げられたテーマは、(1)多角間貿易交渉の正当化と現実のWTO加盟交渉の欠陥、(2)ASEANの直接投資政策の「内生性」、(3)雁行形態発展の理論的根拠、(4)アジア危機の分析と教訓、(5)グローバル化時代の途上国為替運営、(6)ベトナムの国際統合の現行戦略と日本からのアドバイス、などでした。本プロジェクトは研究が中心ですが、こうした教育面の協力も続けていきたいと考えています。
木村教授の講義
2001年夏期調査(ハノイ・ホーチミン市・ダナン・ハイフォン・ナムディン他、2001年7〜9月)
研究者にとって、大学の夏休みはフィールド調査の季節です。モデルやデータ分析だけでベトナムを語るのではなく、すべての研究者が工場、農村、市場を駆けめぐり、理論と現実をつき合わせて初めて政策勧告を打ち出す、というやり方を採用しています。我々のチームにはベトナムを長年フォローし、言葉や習慣を身につけ、コネのネットワークをはりめぐらし、徹底的かつ終わりのない調査活動に励んでいる者もいます。こうして養ったベトナム経済社会に対する「カン」こそが、政策研究者にとってのアセットになると信じます。その上で、最新理論、国際市場動向、国際比較の観点を追加してベトナムを診断します。
2001年の夏も、我々は現地調査を続けました。気温40度をこすかんかん照りの日に、灼熱の棒鋼が流れる圧延工場を訪れて倒れそうになった人もいました。ベトナムの北から南まで、100以上の繊維工場、繊維商社、生地市場、個人商店などをめぐり、流通調査を行った人もいました。何十ものエレクトロニクス工場を見学していると、明らかなパターンが見えてきます。このような活動は、これからも続けていくつもりです。
ダナン鉄工所にて(左)。ニンヒェップ村の生地商にて(右)。
石川プロジェクト(全国で実施、1995〜2001年)
JICAの「ヴィエトナム国市場経済化支援開発政策調査」、通称「石川プロジェクト」は、1995年の日越首脳合意により開始され、3つのフルフェーズといくつかの追加的研究を経て2001年に終了しました。これはわが国にとっても最大規模かつ包括的な知的ODA案件であり、日本側座長の石川滋一橋大学名誉教授はその運営に並々ならぬ努力を払われました。他のドナーの調査研究と比較して、石川プロジェクトの特徴は次のようなものでした。
マクロ安定や体制移行よりも、長期的実物的な開発問題にとりわけ注目した。
現地における綿密なフィールド調査や数量分析を重視した。
一方的な勧告ではなく、日越共同研究の形をとりベトナム側のインプットを期待・要求した。
我々のNEU-JICA共同研究は、石川プロジェクトから派生したいくつかのプロジェクトの一つであり、その中で貿易産業政策を担当しています。我々は、政策インパクトの費用対効果を高めるためのさらなる研究イノベーションをおこなっていくつもりです。
石川プロジェクトの運営・成果を評価した論稿(大野健一、2001年3月)
第3フェーズシンポジウムにおける石川教授とSteer世銀ベトナム局長