ベトナムにおけるJBIC・世銀・ADBによる援助手続きの調和化
(2003年2月時点)

援助の効率性の向上、そして途上国にとっての取引費用の負担軽減という観点から、近年特に、ドナーが援助を実施する際に政策や手続きの調和化を図ることが重視されている。OECDの開発援助委員会(Development Assistance Committee: DAC)では、2001年より援助手続きの調和・簡略化を検討するためのタスク・フォースが設置されているほか、2002年3月の開発資金国際会議(モンテレイ会議)の共同宣言においても調和化の推進が明言された。

調和化のニーズはそれぞれの援助受入国によって異なるため、様々なアプローチが存在する。現在、その進め方に関する原則やグッド・プラクティスづくりが進行している。具体的には、2003年2月のDACハイ・レベル会合に向けた地域別ワークショップの開催(東アジア・ワークショップについては後述参照)や前述のタスク・フォースによるグッド・プラクティス・ペーパーの作成は、そういった努力の一環である。

このような国際的取組みが進むなか、ベトナムでは同国政府の主導のもとで援助手続き調和化の具体的作業が進んでいる。特に、JBIC・世銀・ADBによる譲許的借款にかかる手続き調和化は、これら3つの開発金融機関(以下、3Banks)が同国における全援助額の3分の2以上を供与する大口ドナー(支出純額ベース、前掲の図3-1参照)であることからも、大きなインパクトを与えるものと期待されている。なお、これら3Banksは、既に90年代末から事業進捗促進を目的とした協力(合同ポートフォリオ・レビューなど)を始めており、2001年にJBICが作成した3機関手続比較レポートを契機として手続き調和化へと発展し、現在では以下に述べる明確なクライテリアのもとで実効性ある形で進んでいる。

調和化の対象:
調和化する手続きの対象を、@短期間で効果が発生するもの、A現地政府の負担(取引費用)が際立っているもの、Bベトナム側と3Banks双方にとって利益あるもの、との3つのクライテリアに基づいて選定。これまで、調達、財務管理、環境配慮、住民移転、ポートフォーリオ・マネージメントの各分野が選定され、それぞれにおける手続き調和化のためのルール作りが進んでいる。

調和化の方法:
ルール作りの進め方としては、@JBIC・世銀・ADB相互の手続き調和化(without recipient)、およびA3Banksとベトナム政府との間の手続き調和化(with recipient)の二通りがある。例えば、3Banksの融資対象事業における調達について国際競争入札によるものは前者、国内入札は後者のアプローチがとられる。国内入札については既に共通入札書類のドラフトがベトナム及び3Banksとの間で共有され、今後3Banksによる融資対象外の公共事業においても使用される予定である。With recipientのアプローチは、ベトナム側の制度変更も必要になるため、そのプロセスは慎重であるべきだが、ベトナム政府の望む方向と一致すれば、手続きの簡素化と制度改革の両方を達成することができる。

今後は調和化されたルールの適用段階に移るが、同時に、さらなる調和化努力を@今次対象とならなかった分野(監査システムなど)、Aより詳細な運用レベル(レポーティング内容など)でも進めていく可能性が模索されている。

2003年1月にベトナムのハノイで開催された手続き調和化に関する東アジア地域ワークショップでも、具体的事例として上述の試みが詳細に紹介され、他の東アジア参加国から熱心な質疑応答がなされた。また、3Banksのアプローチに加えてLMDG及びJICAによる取組みも紹介された。一方で、ラオス、カンボジア、ネパールといった援助依存度が高く、無償資金協力(グラント)が中心である国の参加者からは、@援助対象分野の偏り、A多数のドナーの競合、B調和化議論に時間をかけすぎて援助資金フローが停滞する可能性の懸念、などの切実な問題意識が示され、最終的に目指すものは政府のキャパシティ・ビルディングであり、手続き調和化はそのための方途であるべき、との主張がなされた。

こういった活発な議論を経て、同ワークショップでは、@オーナーシップの尊重、A国別アプローチの重要性、B調和化の具体的方法の多様性、という原則が採択された。この結果は2003年2月にイタリアのローマで開催されるDACハイ・レベル会合に、東アジアの経験としてインプットされる予定である。

参考文献:
  • Ministry of Planning and Investment, Official Development Assistance Website.

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