ベトナムにおける援助協調への取組み事例 ベトナムにおけるパートナーシップ・グループの一つである貧困ワーキング・グループ/貧困タスクフォース(以下、貧困タスクフォース/Poverty Task Force: PTF)*1は、99年にベトナム版「参加型貧困アセスメント」(Voices of the Poor)の実施を率い、その成果を「ベトナム開発報告書2000:貧困との戦い」(Attacking Poverty)としてまとめた。その後、一貫して、ベトナム政府による貧困削減のための戦略策定を強力に支援し、特に2000年に世銀・IMFとの合意に基づきPRSP導入が決定されて以降、ベトナム版PRSP(以下、CPRGS)の策定プロセスに深く関与してきた。 PTFは、CPRGS策定プロセスにおいて、ドナー側の意見の集約やベトナム政府への働きかけのみならず、多様なステークホールダーとの地方レベル・ワークショップ開催の支援など、広範な活動に携わった。中でもI-PRSP(2001年3月)で更なる課題と指摘された評価・モニタリング制度の構築に対しては、CPRGSが定める重点分野のうち、直接的な貧困削減に関連する8分野において、具体的で達成可能な目標(中間/成果指標、ベースラインに基づいた目標値を伴うもの)を設定するための調査を実施した。折りしもミレニアム開発目標を「ローカライズ」する必要性が生じていたことから、この調査は「ベトナム開発ターゲット」(Vietnamese Development Targets: VDTs)調査として発足した。 日本はJBICを中心に、世銀やDFIDと共にPTFの議論をリードした。また、上記調査は、8つの重点分野において各分野における実績を有するドナーがリードする形で進められたが(次頁の図を参照)、うち、JBICは円借款により農村におけるインフラ整備を実施してきた実績*2を踏まえ、「基礎インフラへのアクセス向上」分野の調査に対し、内容面の助言やJBIC現地事務所を通じた資金支援を実施した。その成果は、Localizing MDGs for Poverty Reduction in Viet Nam: Enhancing Access to Basic Infrastructureとしてまとめられた。また、基礎インフラ・グループ以外のほとんどのグループにも参加し、コメントなどを通じて関与した。これらの調査を通じて設定された指標群や目標値は、Full-CPRGSに盛り込まれている。 ベトナム開発ターゲット調査と支援ドナー Full-CPRGS完成(2002年5月)後もその実施を着実なものとすべく、PTF は、家計調査のアップデート、CPRGS実施を担う事務局の設置、前述のベトナム開発ターゲット(VDTs)を用いた評価・モニタリングの実施体制づくりへの支援を含め、活発な活動を続けている。さらに、各省庁が策定したセクター計画とCPRGSとの整合性の強化、地域別CPRGSの策定への支援も検討中であるほか、2002年12月のCG会合で合意された、インフラ整備と貧困削減のリンクを中心としたCPRGS拡充作業についても、関連調査の実施を含め、支援していく予定である。 このように、PRSPプロセスにおいてその枠組み作りを支援するパートナーシップ・グループに対し、日本としても引き続き積極的に関与していくことが望まれている。
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注: |
*1正確には、貧困ワーキング・グループ(Poverty
Working Group: PWG)が90年代半ば頃から、UNDP主導で貧困分野に関連するベトナム政府、ドナー、国際NGOをメンバーとして活動を開始し、ベトナム版「参加型貧困アセスメント」を実施、その成果を「ベトナム開発報告2000」に発表した。その後PRSP導入が決まり、同プロセス支援のためにベトナム政府・主要ドナー間でイシューをより包括的に検討・協議する場として、貧困タスクフォースが(PTF)が設置された。PTFで合意された方向性の中で、必要に応じてPWG方式で個別に活動が実施されている。 *2 地方開発・生活環境改善事業T〜V(JBIC有償資金協力)
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参考文献: |
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[ベトナムのページ]