18. 便利さとふれあい

ベトナムは、日本よりは良くも悪くもかなりウエットな世界である。いや、別に物理的に湿度がとっても高いだけではなくて、人間関係の話である。ベトナムは、というよりも経済発展レベルにもよるのだろうか。ベトナムを訪問する壮年の日本人の方々の多くが日本の戦後の懐かしさを感じるそうであるから、昔の日本も今のベトナムのウエットさがあったのであろうか。

例えば私の使っている銀行(一応外資系だけど)はつい最近までATMが存在せず、お金をおろすには銀行の窓口に行く。そこで窓口の女の子達とたわいのない会話をするのが常である。「昼ご飯はもう食べたの」と聞いたり、「今度はいつ日本に帰るの」と聞かれたり。私の事務所はその銀行の近くだから、道端でばったり会うとお互いに挨拶もする。仕事で腹が立っているときなどは、銀行の女の子達の笑顔に癒され、まあここも捨てたものじゃないかなぁ、と思って少し気楽になって事務所に戻ることもしばしばである。おっさんといわれようが、事実そうなのだから仕方がない。

これは日本では、少なくとも東京では起こりえないなー。日本の地元にある銀行の窓口に行って、「ねえねえ、昼ごはん食べた?」とか「週末はなにしていたの?」などと聞いたらどうなるんだろうか?いぶかしげな表情をされることが容易に想像できる、どころか警備員でも呼ばれそうだ。スーパーのレジで会話なんてのもの考えられない。でも、小学生ぐらいのときによくお使いに行った八百屋・肉屋・乾物屋などではこういう会話もあったな。スーパーやATMはとっても便利だが、それと反比例して人とのふれあいが減っていくのは仕方がないところであろうか。

さて、そんな銀行も最近ATMを導入。やはりお金を自由におろせる便利さに惹かれ、私もATMカードを作る。しかも、営業の女の子がとてもかわいらしく、一生懸命に勧めてくれるものだから断る理由もない。でも、両替をすることも多いし、これからもきっとたまに銀行の窓口には遊びに行くことであろう。いや、誤解しないでほしいが、かわいい女の子を目当てに行くわけではなく、あくまで人とのふれあいである、かな?   

20088月)

<後日談>
さて、最近はベトナムドンをおろすときはATMを使用することが多くなってきた・・・・が、ある日曜日、お金が足りなくなったので、ATMに行き、カードを入れ、さて金額を入力しようとしたとき、突然ATM機の電源が落ちてしまった!・・・で、カードも出てこない。これ はまいったなぁ、でも普通は緊急連絡先とかが機会のどこかに書いてあったりするんじゃないかと思ってあちこち見てみたが何もない。しかたなく、銀行のコールセンターに電話してみると、「営業時間は月曜日から金曜日の8:30〜16:30です」とのオートメッセージが・・・それって窓口の営業時間と一緒じゃないか。この銀行、一応有名な外資系の銀行なのに・・・。このまま立ち去ってあとでATMカードが出てきて誰かに持ち去られても困る。 まいったなぁと思い、もう機械に共通のやり方はこれしかないと思い、「てめー、ゲロしやがれ!」と思いながら数回機械を蹴飛ばしてみた。そうすると、突然画面にカーソルマークみたいのが出てきて、「わるいわるい、オエー」って感じで苦しそうにATMカードが吐き出されてきた。あー、よかった。もうATM機は銀行の営業時間外は使わないようにしよう・・・・って、それじゃあ窓口に行くのと変わらないじゃないか! まだまだ便利さへの道は長い・・・。

(2009年6月)

 Menu