MDGコスティング

世銀ペーパー執筆者との面会記録

先方: Margaret J. Miller (World Bank Senior Economist, HDNVP & SRM)

当方: 大野健一

場所: ワシントン世銀本部Gビルディング8

日時: 2002516日午後4

●このワーキングペーパー(S. Devarajan, M.J. Miller, E.V. Swanson, “Goals for Development: History, Prospects and Costs,” World Bank, Apr. 2002、世銀Webよりダウンロード可)作成の背景を教えてほしい。

1年程前、シニアマネジメントから世銀としてのMDGコスティングを試算するよう指示があった。3人の執筆者は十分協力したのでどの部分が誰の担当ということはない、共同執筆である。発表以降メディアがずいぶん注目してくれて、世銀のExternal Relationsでは、すでに50以上の記事で取り上げられたといっている。改訂するかもしれないが、いまのところその具体的な予定はない。

●投資->成長->貧困削減というICORを用いたマクロアプローチと、教育・保健・環境などの必要額の積み上げアプローチの2つのやり方で試算されているが、この両者の政策の関係は如何?

その両方がadditiveに必要というわけではない。Pro-poor policiesが成功すれば投資・成長が起こる可能性が高い。また成長すればpro-poor policiesもしやすくなるであろう。結局、どちらをとるかは国によるのではないか(このあたり、回答はかなり曖昧であった)。

●なぜ必要資金をすべてODAでまかなうと仮定するのか。民間投資、国内貯蓄動員は考えていないのか。世銀自身、これらを重視するプログラムをたくさん実施しているではないか。

われわれはODAだけとは言っていない、民間・国内資金動員も重視する。(17ページにマクロアプローチでは「すべてODAでまかなう」と明記してあるとのこちらの指摘に対し)それは気が付かなかった、この部分は私の担当でないのでよく読んでいない。教育については国内資金動員のことも書いてある。私としては、当然ODAだけではなく民間・国内資金も動員されるべきだと思う。

ODAを倍増しても途上国の援助受入れ能力には問題ないと20ページに書いてあるが、アフリカなどに関してわれわれは懸念を持っている。

それは正当な懸念である。

●このペーパーでは、各国が個別にMDGを達成するとの前提でコストが計算されているが、もう一つの考え方として、貧困者を多く抱える途上国に努力を集中すれば費用対効果がよくなる。この点に関してどう考えているのか。

われわれの計算はアカデミックなものであり、実際にどのような戦略が取られるのかはまた別の次元だ。もし効率を最重視するなら、中国とインドに努力を傾注すればよいということになるが、われわれはそのような見方をとらなかった。

ODA積み増しの投下先にならない国(Group I)となる国(Group II)に分かれているが(18ページ)、どの国がどちらに属するのかは公表しないのか。

センシティブなので公表はしない。われわれの計算はアカデミックで、この分類が世銀政策とは全く関係ないものであることを理解していただきたい。Group I は、すでにMDGを達成しつつある東アジアや、ODAが貧困にほとんど影響を与えないブラジルなどが含まれる。

●このペーパーには必要ODA積み増し額が年あたり400700億ドルとあるが、プレス発表では400600億ドルとある。100億ドルの差があるが。

それは気がつかなかった。いずれにしてもたくさんの試算のレンジを示すものであるからあまり気にしていない。

●このペーパーを作成するにあたり特に依拠した研究があれば教えてほしい。

世銀のWebからも取れる、David Dollar and Paul Collierのペーパーだ。

以上。

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