2003年9月4日
GRIPS開発フォーラム

ベトナム:CPRGSをめぐる最近の情勢

以下は現地の援助関係者からの情報を基にベトナムのCPRGSに関する動きを開発フォーラムにおいてまとめたものである。誤りや問題点はGRIPS開発フォーラムに帰するものである。情報提供を頂いた関係諸氏に心より感謝する。

CPRGSをめぐる動き

現在進行中の課題
現在、ベトナム政府とドナー・コミュニティは、CPRGSの@内容面の拡充とA実施体制強化に取り組んでいる。前者は日本が中心となって支援するCPRGSの柱の1つである"Growth"の具体的な拡充プロセスであり、後者は貧困アセスメント実施、JSA*によって課題とされたセクター/地方レベルの開発戦略とCPRGSとの連携強化、中期支出枠組み (MTEF)の導入等で、中期支出枠組み導入を除いてはCPRGSプロセスのドナー側の推進母体であるPoverty Task Forceが中心となっている(取り組みの詳細については以下の表を参照のこと)。

* IMF and IDA "Vietnam Joint Staff Assessment of the Poverty Reduction Strategy "June 6, 2002

 

問題の所在と取り組みの現状

ベトナム側による今後の進め方

CPRGSの内容の拡充に向けた動き
成長戦略の充実 ・大規模経済インフラ及び投資環境整備を通じたベトナム産業の国際競争力強化の重要性を問題提起(02年12月CG会合)。

・上記考え方に対する日本の考え方の発信(例:「Japan News」 03年6月の中間CG会合)。

・日本が実施する産業政策にかかる既存及び既往の諸調査研究の発信と共にベトナム政府、関心あるドナーとの連携のあり方の検討が必要か。

2004年頃から次期5ヵ年計画(2006〜2010年)の起草作業が開始される見通し。5ヵ年計画という既存の政策体系とCPRGSの調和のあり方、5ヵ年計画における経済成長と貧困削減の取り扱い(含む両者のバランス)が焦点のひとつか。
大規模インフラに係る新たな章の追加 2003年12月CG会合に向けてベトナム政府が新たな章を起草中。そのプロセスの側面支援の観点から各ドナーがインフラと貧困削減の関係に関する調査研究を実施中。日本はGRIPS開発フォーラムにて、「大規模インフラと経済成長・貧困削減」に関する調査を実施中。 起草プロセスにおいて当該ドラフト、各ドナーが実施の調査研究を発表するセミナーが開催される予定。
実施枠組みの強化に向けた動き
第2回地域別貧困アセスメント
(PTFグループ)
・2002年に実施したVHLSS (Vietnam Household Living Standards Survey)の結果をベースに参加型で貧困の現状を把握する第2回貧困アセスメントを実施中。PTFのフレームワークの下、8地域*1ごとにドナーが分担して実施を支援。

・参加型貧困アセスメントの方法獲得の重要性や、同調査の政策インパクト(1999年の第1回貧困アセスメントの調査結果*2は、現在のCPRGSの基本方向性を形成した)が大きいことに鑑み、プロジェクトの経験のある省での貧困アセスメント実施を検討中。

・第2回貧困アセスメントの結果は、省別、地域別、全体総括と3種のレポートとして纏められ、2003年12月のCG会合で発表される予定。
中期支出枠組(MTEF)の導入 ・2002年6月付JSAにおいて導入が課題とされたのを受け、世銀等はその導入を推進。

・Public Financial Management Reformのパートナーシップ会合で主に議論。

2003年6月PTFでMPIはMTEF導入の構想を説明。CPRGSとリソースアロケーションの関係を強化するため、教育、農村開発、保健、運輸の各セクターについて担当省庁と協議していく(2003〜2008)。ベトナムでは投資予算と経常予算の管轄がMPIと財政省に分かれており、投資と経常予算を統合するMTEFの導入は容易ではないと思われるが、今後の具体的進め方については不明。
モニタリング強化 ・02年5月付JSAにおいてモニタリングデータへのアクセスの強化などが課題とされる。
CPRGSのアウトリーチに向けた動き
セクター戦略
(PTFグループ)
各セクター省庁はセクターまたはサブセクター毎の5ヵ年や10ヵ年の戦略を策定するが、これらとCPRGSの関係が希薄であることに対し、2002年6月付JSAにおいてそれらの連携強化、優先順位付けの強化が課題とされる。 MPIは2003年6月PTF会合において今後の作業を説明:

・セクター開発計画に織り込むためのワークショップ開催(7〜8月)。

・いくつかのセクターで開発計画への落とし込みをパイロット的に進める(2003〜2005)。

CPRGSの省の年次計画への反映
(PTFグループ)
・2002年6月付JSAにおいてCPRGSの省レベル計画への浸透が課題とされる。

・PTFは2003年5月〜6月、例年、MPIが毎年各省年次計画策定のガイダンスのために開催する会合に相乗りする形で8地域を対象とした地域別ワークショップ開催を支援。JICAはうち2地域のワークショップ開催を支援

2004年2月までいくつかのプロビンスでパイロット的に実施、2004年以降は各年10プロビンスずつ、2010年に全てのプロビンスに拡大する意向。

*1西部、北東部、紅河デルタ、北部沿岸、中部沿岸、中部高原、南東部、メコンデルタ。
*2 Joint Report of the Government-Donor-NGO Working Group [1999] "Vietnam Development Report 2000, Attacking Poverty."

参考》注視すべきタイムフレーム
2003年9月 経済インフラに関するPTFワークショップ
         10月 地域別貧困アセスメントに関するワークショップの可能性あり(例年、 PTFワークショップを実施している)
         11月末 CG会合:地域別貧困アセスメントの最終レポート発表
2004年1月 CG会合後の対応方針の検討(特に毎年3〜4月にかけて開催されるPTF会合で当年度のPTFの主要活動が決められる)。

*上記以外に、MTEF及びセクター戦略に関する議論がPTF及び「Public Financial Management Reform」のパートナーシップ会合で議論される可能性がある。

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