IDCJ主催シンポジウム(2003年7月11日)
援助協調を超えて
−わが国援助体制と人材に必要な構造改革の本質−

作成日付:2003年7月14日作成
文責:GRIPS開発フォーラム 二井矢

来賓挨拶:吉川元偉 外務省経済協力局審議官

  1. 援助協調に旗を振る理由と今後の方向性
    援助協調を進める背景には、日本の援助に関し、@ODA予算の削減、A受入国からの評価のみならずドナー・コミュニティからの正しい理解が重要となってきたこと、B(日本が長年つきあってきた東アジア諸国より)オーナーシップや援助吸収能力の低い国に対する有効な援助アプローチ模索のプロセス、がある。援助協調への対応はODAの効率化を目指す、日本のODA改革における柱の一つであり、「内なる改革」と「外への発信」という2つの側面がある。

  2. 「内なる改革」

    • 現在パブリック・コメントに付されているODA大綱にも援助協調の必要性を明記。

    • すでに15カ国で国別援助計画を策定。本年新たにベトナム、インドネシア、パキスタン、スリランカ、モンゴル等でも策定予定。同計画ではスキームを超えたODAを目指す。

    • 現地機能の強化、特に「ODA大使館」体制構築。

    • スキーム改善。特に、援助協調の実施手段を整備するために、見返り資金の活用、予測性の向上、日本の経済協力の競争力を高めるための諸措置(無償コスト削減や計画策定手法など)などに取り組む。

  3. 「外への発信」

    • 2003年2月にローマ開催の手続き調和化会合では、アジアの経験の伝達を重視し、@オーナーシップ、A国別アプローチ、B多様な援助モダリティ(「ベスト・ミックス」の重要性)について主張し、全面的に受け入れられた。

    • 援助協調の急先鋒であるDfIDとの関係については、2003年4月に東京で開催されたDfIDアジア地域事務所長会議を利用して対話を図ったところ、それほどの乖離はないことが明らかとなった。実態面においても、そもそもDfID援助額に占める一般財政支援は12%にすぎない一方で、日本の援助額の30%がプログラム援助である。

    • ドナー・コミュニティにおけるアジェンダ設定という観点からも、貧困削減、経済成長、それらを達成するためのインフラの重要性といった点についてバランスのとれた議論を喚起すべく、DACで1〜2年をかけて仕込んだ。最近、DACのPov Netのインフラ部会では副議長のポストを得た。また、世銀もインフラ支援の拡大へと方針転換し、JBICと世銀の共同研究も始まる。

  4. 今後の課題

    • 日本の援助関係者の中には、援助協調にまだ懐疑的な見方を持っているものも多く、日本の関係者の意識改革が重要である。

    • 援助協調を進めるにあたっての具体的な手法の改革、人材育成も必要。

以上

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