GRIPS開発フォーラム
2004年1月6日

開発政策の対外発信のための研究サポート

GRIPS開発フォーラムの活動は今年で3年目を迎えます。我々にとって、2003年も実り多い1年でした。引続きベトナムを中心に、産業開発支援、大規模インフラと貧困削減、PRSP・援助協調支援、国別援助計画改訂などに精力的に取組みました。また、「アジアの開発経験と他地域への適用可能性」のテーマで文部科学省21世紀COEプログラム拠点(FY2003〜07)に選ばれました。COEプログラムの研究助成をうけて、@ハノイに分室オフィスを設置、優秀な若手ベトナム人を発掘・動員して東京と同様の研究イノベーション・ネットワーキングを推進するとともに、A本部体制を拡充し、アジア他国・アフリカ等での研究・発信活動を強化していきます。

2004年からは新しいメンバーも加わる予定です。今後とも引続き、アドバイスやご支援を頂ければ幸いです。

「GRIPS開発フォーラム」の趣旨

  • 2002年1月にGRIPSの研究プロジェクトの1つとして発足。

  • 学際的な政策研究機関としてのGRIPSの比較優位を生かして、国際開発・経済協力分野における戦略的かつ政策志向の研究調査を実施し、内外に積極的な発信活動を行う。

  • その際に、GRIPSが有する幅広い知的ネットワークを活用する。

「GRIPS開発フォーラム」の前提・目的

  • 国際的な開発潮流に対し、日本は無視・反発・追随でなく、積極関与を通じて建設的貢献・批判を行うべし。

  • 日本独自の貢献部分は、@先進国/アジアの二重アイデンティティ(経済協力二分論)、A東アジアの開発援助経験に立脚すべし。

  • 政策を支えるために、産官学の中間領域で、既存の組織・研究をつなぐカタリストをめざす。単なる研究・評論ではない、アクションに直結する政策研究のイノベーションを行う。

  • 明確な政策を志向する知的NPOが多数叢生し、政策競争が活性化することを期待する。

「GRIPS開発フォーラム」が主導あるいは深く関与するプロジェクト

プロジェクト 関係機関 概要
ベトナム産業貿易研究 (JICA-NEU共同研究)
*なお、JICA事業としての研究プロジェクトは2003年12月をもって終了。今後は新GRIPS- NEU共同研究に引き継がれていきます(下記参照)。
国際協力機構(JICA)、ハノイ国民経済大学、在越日本大使館

国際統合下の産業育成への知的援助。少数基幹産業について内外情勢を徹底的に調べ、先方政府と議論する。

活動

政策対話の実施(ベトナム出張)

研究成果を出版(「ベトナムの工業化戦略」日本評論社、越語版)、Web上での政策提言、及びベトナムの工業団地情報の紹介。

セミナー開催(参加者はベトナム政府、大使館、JICA、JETRO、大学・研究機関、日系進出企業など):@産業別(繊維・電子・ソフトウェア・バイク)セミナー(2003年3月ハノイ)、及びA工業化政策・関税提案のクロスカティング・イシュー議論(2003年9月ハノイ、ホーチミン)。

ベトナム開発フォーラム(新GRIPS-NEU共同研究) ハノイ国民経済大学(NEU)

ベトナムに政策研究拠点をつくり、優秀な若手研究者を動員して、研究・政策提言を行うことを目的とする。当面の研究テーマは、国際統合下の産業育成、為替政策、ビジネス志向NGOなど。

活動

ハノイ分室オフィスの設置(2003年12月)。2004年2月に正式発足。

工業化戦略と国際収支と外債発行の可能性にかかるセミナー開催(2003年12月)

貧困削減戦略研究 外務省、在越日本大使館、国際協力事業団(JICA)、国際協力銀行(JBIC)
*FASIDから研究助成を頂いています。

東アジア型のベトナムで貧困削減戦略がどのように機能するかを中心に調査し、日本の対応を提言。昨年は、ベトナム政府のCPRGS(ベトナム版PRSP)拡大作業を支援すべく、大規模インフラと経済成長・貧困削減にかかる分析的調査を実施。

活動

2003年4月ベトナム予備調査

2003年6月ベトナム現地調査、中間CG会合(サパ)でConcept Paper配布。

2003年9月ハノイ・ワークショップ、ドラフト・レポート発表・コメント聴取。

2003年10月ベトナム(調和化ワークショップ参加を含む)及びカンボジア現地調査(ベトナムと異なる援助受入状況をもつアジア後発国での援助協調の展開にかかる予備調査)。

2003年12月ベトナムCG会合で最終報告書、"Linking Economic Growth and Poverty Reduction-- Large-Scale Infrastructure in the Context of Vietnam's CPRGS"を発表・配布。

2004年2〜3月アフリカ予備調査を予定(援助協調)。今後、援助受入国の多様性やニーズをふまえての、援助モダリティの「ベスト・ミックス」のあり方を検討していく予定。

他にも、以下を始めとする様々な活動に積極的に取組んでいます(例示)。

<ODA政策提言>

ODA総合戦略会議: 外務大臣の諮問委員会として、わが国のODAの基本方針について助言を行うもの(2002年6月開始、今まで13回開催)。委員は計15名(大学関係者、NGO、民間企業、ジャーナリズム関係者など)。なお、同会議には外務大臣(座長)、副大臣以下を始めとする外務省幹部およびODA関係機関が出席。座長代理は渡辺利夫氏(拓殖大学教授)、当方の大野健一が委員として参画。2003年の主な取組みとして、主要国にかかる「国別援助計画」改訂(策定)や新「ODA大綱」の策定など。

ベトナム「国別援助計画」改訂: 2002年10月から取組みが始まった、日本の対ベトナム「国別援助計画」見直し作業が完了。現地では大使館のリーダーシップのもと、4J(大使館、JICA、JBIC、JETRO)の連携強化が進み、越政府・他ドナーとのパートナーシップの中でオールジャパンの見解を打ち出す体制が確立。また日本においては、当方の大野健一をタスクフォース主査として、外務省、在越日本大使館、JICA、JBICを中心に、オープン・ネットワーク型によるサポート体制を構築。

無償資金協力実施適正会議: 外務省経済協力局長の下、無償資金協力の適正な実施と透明性の向上のため助言を行うもの(2003年2月開始、今まで8回開催)。委員は計6名(金融、開発経済、法律、会計の専門家、およびNGO)「外務省を変える会」の提言をうけて設置。委員長は西川和行氏((財)公会計研究協会会長)、当方の大野泉が委員として参画。 ネットワーク構築・研究交流・発信活動。

ワシントンを中心とする日本人経協関係者との交流・ネットワーク構築(Web、相互訪問、政策議事録発行など)。同ネットワーク(「ワシントンDC開発フォーラム」)の主要メンバーは在米日本大使館、IMF、世界銀行、JICA、JBIC、NGO、研究者などで(各自有志として参画)、2003年はパリ、バングラデシュ、英国サセックスにも拡大。当方は新ODA大綱、アフリカ支援を中心に政策提言を実施。

東アジアの開発経験、pro-poor growth、日本の援助戦略にかかる基本的考え方を対外発信: GDN会合(2003年1月、カイロ)、OECD/DAC関係者セミナー(2003年1月、パリ)、DFIDアジア事務所長会議プレゼンテーション(2003年4月、東京)、UNCTAD「低開発国の新貿易・開発戦略」に関する専門家会議(2003年6月、ジュネーブ)、IDCJ援助協調シンポジウム(2003年7月、東京)、韓国政府・OECD/DAC共催シンポジウム(2003年11月、ソウル)への参加など。

各種研究会への参画: FASID開発援助スタディー・グループ、アジアダイナミズムと技術協力政策の展望(経済産業省)、開発援助の新たな課題に関する研究会(財務省)、エル・サルヴァドル国経済開発調査(JICA)、ボリビア国別援助研究会(JICA)、社会基盤整備分野における開発援助の経験と展望に関するプロジェクト研究(JICA)など。

Japan-Vietnam Economist Club (JVEC): GRIPSの大野健一と早稲田大学のTran Van Tho教授を核として、ベトナム人と日本人経済学者によるクラブ(2003年5月発足、月1回の頻度で研究セミナーを実施)。

また将来的には、次の重要なテーマについても取組んでいきたいと思っています。

Best mix論(グラントとローン、援助形態など)

Aid non-fungibility and shared responsibility

Selectivityとgood governanceの基準の多様性

グローバル化時代の後発国工業化戦略

アフリカ

中国(国際分業、ODAのあり方など)

詳しくは当フォーラム・ホームページをご参照下さい。 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

以上

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