米国通信


このページではJICAアメリカ合衆国事務所長・山本愛一郎氏の「アメリカ援助事情」を掲載していきます。


2008年11月5日 

アメリカ援助事情 号外 「アメリカ大統領選挙結果」

11月4日に行われた米大統領選挙で、バラック・オバマ氏が圧倒的な勝利を収め、アメリカ建国以来初のアフリカ系の大統領が誕生した。民主党もクリントン以来8年ぶりに政権を奪還した。  

オバマ氏の勝利は、アメリカ人が建国以来悩み続けてきた人種問題を乗り越えたこと、そしてブッシュ政権下で失った世界のアメリカに対する信頼を取り戻すきっかけとなることの2つの点で意義あることと考える。  

4日夜シカゴで行われたオバマ氏の勝利演説には、多くのアメリカ人が涙した。筆者もその一人だ。共和党員でありながら、終盤オバマ氏支持に転向したパウエル元国務長官も号泣したそうだ。聴衆には、黒人指導者ジェッシー・ジャクソン氏の顔も見えた。以下はその演説の一節だ。   

If there is anyone out there who still doubts that America is a place where all things are possible, who still wonders if the dream of our founders is alive in our time, who still questions the power of our democracy, tonight is your answer. -------Change has come to America!  

さらに昨夜から今日にかけて、オバマ氏の当選に沸く世界の人々の姿もテレビなどで放映された。ケニアの人々が星条旗を掲げてオバマ米大統領の誕生を祝う様子は感無量だ。オバマ政権の下でアフリカにも真に安定した平和と発展が訪れるような予感がした。    

外交・開発の分野に目を向けると、思えば昨年11月に米国有数の外交シンクタンクであるCSIS(戦略国際問題研究所)が「スマートパワー委員会報告書」を発表したあたりから徐々に流れが変わってきたような気がする。「スマートパワー」とは、軍事力という「ハードパワー」に、民間外交や知力を含めたアメリカの持つ強固な「ソフトパワー」を融合させて、世界から信頼されるアメリカを取り戻そうとする考え方だ。「大事なことは、アメリカ合衆国が何人の敵を殺すかではなく、何人の味方を作るかだ。」という言葉に代表されるこの報告書は、民主党、共和党を問わず、アメリカの外交政治関係者に大きなインパクトを与えた。共和党上院議員でありながらオバマ氏の信頼の厚いチャック・ヘイゲル氏(次期国務長官のうわさもあがっている。)も、その著書「America's Next Chapter」で、自分がイラク戦争を支持したことは誤りだったと 率 直に認めた上で、「ソフトパワー」に基づくアメリカの新しい外交政策を提言している。  

オバマ氏の外交、開発問題における立場もこのような流れを汲んでおり、選挙運動中には、ODAの倍増と平和部隊(アメリカの民間人をボランティアとして発展途上国に派遣する制度で故ケネディー大統領が1961年に創設。JICAの青年海外協力隊のモデルとなった。)の派遣数の倍増を発表した。ODA倍増については、残念ながら、金融危機への対応もあり、先送りされるものと思われるが、アメリカ民間外交の旗頭である平和部隊についてはさらに強化されることが予想される。  

いずれにせよ、オバマ大統領の誕生は、開発援助の世界でもアメリカが強く信頼されるリーダシップを取ることを可能にするもので、我々も大いに歓迎すべきことと思う。                                                              

JICAアメリカ合衆国事務所長 山本愛一郎


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