アフリカの森

研究者インタビュー No.5
高橋基樹氏 (神戸大学大学院 国際協力研究科長)

コラム:主流派経済学の合理的経済理論とアマルティア・セン氏

アマルティア・セン氏は、「Rational Fools」という論文の中で、現実の人間は利己的で非現実的であるが故に主流派・新古典派経済学が前提としている合理的経済人という発想だけでは人間の経済行動を論理的に証明できず、従って人間の中にあるシンパシー(同情、思いやり)の存在を考慮しないといけないと論じています。例えば、途上国のカフェ・テラスで、物乞いをする人の前で食事を取るのと、ホテルの遮断された部屋で食事を取るのとでは個人の効用も異なるのではないかということです。つまり、主流派経済学は、周りの環境に影響されず常に効用が最大である決定を行う合理的経済人を前提としている(カフェ・テラスで食事をしてもホテルの部屋で食事をしてもどちらの場合でも効用は同じ)のに対し、セン氏は、人間にはシンパシーがあり、人の効用が変化するというのを考えないといけないと論じています。私は、そのシンパシーには思いやりなどのポジティブな感情だけでなく、裏切りや憎悪などのネガティブな感情も分析の枠組みに組み込んでいかなければならないと思っています。

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Last updated: 2007.6.26