【冒頭発言:荒木光彌氏】
「国際協力実施体制の再構築・強化に向けて」
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新実施体制を「ODA」を中心とした「三層構造」で捉えるのでなく、「国際協力」 という発想で、企業やNGO、コンサルタント、研究者、国民を含む「四層構造」の視点で再構築・強化すべし。特に、司令塔と第四層の役割が重要
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二層と三層(政府と実施機関)のみ変革しても、国民参加、戦略性強化の課題は解決しない。援助原理主義では通用せず、「新時代」は国民意識との関りを強化する仕掛けづくりが必要。
仕掛けの提案として、
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司令塔へのハイレベルアドバイザーの設置(賢人を集約)、
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援助実施者協議会の設置、
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国会議決予算型へ(なお、1と2には民間が参加し、官民の同盟/アライアンスを構築)。
例えば、気候変動や環境関連のODAといっても、各省ばらばらに立案しているのが
実態。「重点イシュー」方針を司令塔が作り、方針に基づいて第二層で省庁間を調整し、新JICAが「重点イシュー実施計画」を作るという仕掛けが必要。
*提言の詳細はこの図に凝縮されているので、よくご覧下さい!
【意見交換のポイント、論点】
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民間の知見をどう活かすか(全ての層に関連)
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第四層の重要性、民間の知見を活かすべきとの荒木氏の提案に、多数の賛同あり。
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経済財政諮問会議には民間議員もいるので、既存の枠組みを活用することも一案か。
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官民連携、All Japan体制については皆、総論賛成だが、企業と援助関係者との間で認識共有が不足しており、実際はそう簡単でない。官民が胸襟を開いて話し合い、新しい体制を支えていく仕組みが必要。
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「商社のODAは汚い」というイメージがあるようだが、それは誤解。輸出振興や黒字還流が国策だった時代と現在は大きく異なる。今は、各社ともコンプライアンスが徹底しており、ODA不祥事発生による企業リスクは大きい。企業におけるODAの位置づけも変化している。ODA案件形成の懐妊期間は長く、ODAで利益を得ようという企業は少なく、それでもODAに取り組むのは
、顧客である途上国との良好な関係構築や個人的な強い思い入れからである。
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コンサルタント業界は、スキームの矛盾を含め、日本の実施体制のしわ寄せが来ている。こういった状況で若い人材をひきつけるのに苦労しており、強い危機感あり。
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ODAと企業の関係は、個別案件の入札・応札を通じた関係から、投資環境整備や制度作りへの支援、それをめざした協働へと性格が変わりつつある。
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現地ODAタスクフォースに民間企業やNGOが参加する方向は、企業利益と相反しない範囲であれば進めるべし。
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現地ODAタスクフォースでも、バングラデシュの例など、企業、NGO、コンサルタン
ト、研究者と一緒に勉強会をしている取り組みもある。
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戦略性をどう強化するか(第一層)
荒木氏より、「司令塔」を国家安全保障会議(NSC)との関係で位置づけ、政策シンクタンクを設けよとの提案に対し、以下の議論。
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日本版NSCは必要、国際協力政策もこれに位置づけるべし。
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現行のNSCは各省庁の寄せ集め、事務局も20人程度であり実際に有効に機能しているか疑問。過度な期待はしない方がよい?
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NSCは狭い国益しか考えられない可能性を危惧、むしろ距離をおいた方がよい。グ
ローバル化時代は、国際的な知的競争の時代。知恵で勝負し、他機関・ドナーの資金を使う意識が必要。また、安全保障や資源獲得といったハードな国益追及だけでは消耗感があり、国民はヒューマンな部分(人道支援、開発)も求めているのではない か。
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国益に基づいて政策判断をしても、国際潮流で相反する可能性もある(例:OECDで
のタイド、アンタイドをめぐる議論)。世界の援助潮流とどう付き合い、国際レジー ムを形成していくという発想が必要。
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国会とどう向き合うかも、考慮すべし。
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(荒木)「司令塔」は、国際潮流を考慮にいれて日本のあるべき方向を打ち出すべ
きで(短期と長期の国益のバランス)、その意味で政策シンクタンクの役割は重要。 例えば、環境ODAのあり方は省庁を超えて包括的に考えるべし。
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(荒木)根本的には、政策を生み出せる賢人、人材の集約が必要。賢人を集める仕 組みづくりについて、斬新的なアイデアが求められている。
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ODA行政改革(第二、第三層)
荒木氏より、縦割り行政・予算の一元化、予算編成改革、調達制度改革といった ODA行政改革の提案があり、以下、議論。
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予算制度に裁量や柔軟性をもたせる必要性は認めるが、この実現可能性は、中長期的な資源投入の方向性をどの程度作れるかに依拠する。
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円借款の財政投融資依存型から脱却せよ、との荒木氏の提案は理解するが、譲許性ある支援を行なう新JICAが市場で債権を発行する能力を見極める必要あり。
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新JICAでは有償・無償の比率を含めた見直しが必要。
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(荒木)円借款が財源を財政投融資に依存していたのは、戦後、日本が資金調達に困っていた時代の話。今とは時代背景が異なる。無償・有償の比率を含め、そろそろ
見直しが必要。
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効果重視の調達制度づくりにおいて、個別案件の決定プロセスにおける透明性が必要。民間からの提案型を増やすなどの工夫を。
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日本が国際援助潮流に能動的に関与し、アジアの経験、成長、インフラ、技術協力 を通じた人材育成等、日本の援助のよい部分を一人よがりにならないで発揮していく
ことが必要。ただし、そのためには現場の体制が重要。現場への権限委譲を進め、縛 りをなくし、柔軟に対応できる仕組みが必要。
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国際協力庁?JICAの「スーパー独法」化?(第二層、第三層)
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荒木氏の国際協力庁の可能性の提案に関し、新組織を作るより、外務省に蓄積されている地域・国別の専門家の知見を援助政策に反映させる方が効果的ではないか。外務省は、国益・外交・開発をつなぐネットワーキング、調整機能を果たす役割を担うべき。また、国益との関係では、ODAは外交ツールというより、長期的視野から外交の基盤(インフラ)となる(第7回会合における、草野先生の発言)。
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(荒木)国際協力庁は、経験の蓄積を確保する方策として近未来的に提案したもの。そうでなければ、外務省として内部の組織改革をすべし。国際協力局と地域局との連携強化、地域の専門性を活かした人事異動等。
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独立行政法人のもと、新JICAが一律、予算削減されることの是非を問うべき。
「スーパー独法」という位置づけを付与することも考慮に価するのではないか。ただ し、JICAの高コスト体質やコンサルタント関連の手続きの改善等、課題に取り組むこ
とも同時に必要。
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(荒木)経済財政諮問会議でODA予算を他の予算と横並びに一律カットしたり、JICAに関し「スーパー独法」化の可能性を議論することもなく、他の独立行政法人と
同じルールを適用するなど、国際協力の位置づけを考慮した議論が政府ワイドでなさ れていない。それゆえ賢人を集めた政策シンクタンクや政治を絡める仕掛けが必要。
【雑感】
このように、荒木氏から、戦略性強化、及び国民参加・民間を含む広い裾野に支えら
れた国際協力の実現にむけて具体的な提案をいただき、非常に活発な意見交換となりました。
詳細な議事録は作成次第、掲載いたします。
今回も、皆様からのご意見、ご提案を歓迎いたします。
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