報告
世銀・IMF PRSP実施プログレスレポート
Poverty Reduction Strategy Papers (PRSP)
--Progress in Implementation
prepared by the staff of the World Bank and
IMF
for the 66th meeting of the Development Committee (September 28, 2002)
1.背景
本ペーパーは、PRSP実施にかかるプログレスレポートであり、2002年9月末のIMF・世銀総会(於ワシントン)の時に開催された世銀・IMF合同開発委員会(2002年9月28日)に提出されたもの。2002年3月世銀・IMF合同による中間レビュー以降本年9月までに世銀・IMF理事会に諮られたPRSP文書を対象に、中間レビューが指摘した課題・留意点を中心に、PRSPプロセスの進捗と課題を整理したもの。(次回のプログレスレポートは2003年9月、包括的なレビューは2005年春に作成される予定。)
2.構成
2002年3月中間レビュー以降、本年9月まで新たに提出されたPRSP文書を概観。
「中間レビュー」でPRSP実施の際のキー・イッシューとして指摘された以下の課題が、新たに策定されたPRSPでどのように扱われているかについての考察、及びそれらに対する世銀・IMFの取組み。
A. Institutionalizing
Stakeholder Participation and the Role of Parliaments
B. Macroeconomic Choices and Pro-Poor
Growth
C. Poverty and Social Impact Analysis
(PSIA)
D. Public Expenditure Management (PEM)
E. Monitoring and Evaluation
F. Donor Alignment and Collaboration
under the PRSP
G. Harmonization and Donor
Coordination Efforts
PRSP実施段階における、世銀・IMFによる貧困国のキャパシティビルディングに向けた具体的な支援内容。
結論
3.主なメッセージ
2002年3月の中間レビュー以降、9月までの進捗は順調で、PRSPプロセスは軌道に乗っている(PRSP提出9カ国(計18カ国)、I-PRSP提出3カ国(計45カ国)、準備状況レポート6カ国、プログレスレポート2カ国(計5本))。また、PRSP策定国における実施状況は、PRSPプロセスのダイナミズムと妥当性を示すものである。
(図表:PRSP Countries by
Progress)
今後の主要課題
A. キャパシティ・ビルディング
B. 政策対話の深化
C. 貧困戦略と援助の協調
D. 貧困戦略と予算策定/実施の統合
PRSP実施に際してのキー・イッシューに関する考察の主要点
A. Institutionalizing Stakeholder Participation and the Role of Parliaments
市民社会参加枠組みの制度化、予算サイクルへの市民社会の関与、PRSPの地方への浸透、セクター省庁の関与、議会の関与、すべての側面において進展があるが、より一層深化させる必要あり。
B. Macroeconomic Choices and Pro-Poor Growth
初期のPRSPにおいては、マクロ経済成長予測及び「成長の源泉」(source
of
growth)、外的ショックに対する代替案と予備資金、貧困削減ゴールと政策選択のリンク、選択におけるトレードオフに関する検討は限定的。今後、世銀・IMFは「成長の源泉」について具体的に分析し、マクロ経済予測をより現実的にするとともに、Pro-Poor
Growthを可能とする政策手段に関する支援を強化し、それらに関する調査を重点的に実施していく予定。
C. Poverty and Social Impact Analysis (PSIA)
PSIA導入は技術的・時間的な制約のために部分的。世銀は2002年4月にPSIAマニュアルを公表する等、支援を継続中。
D. Public Expenditure Management (PEM)
HIPCs資金のトラッキングについては実質的な進捗あり。公共支出レビューについてもバイのドナーとの連携を強化し、早期の成果を目指して支援。
E. Monitoring and Evaluation
政策手段に基づいた中間指標の設定、モニタリング体制の早期構築が課題。
F. Donor Alignment and Collaboration under the PRSP、及び
G. Harmonization and Donor Coordination Efforts
PRSP枠組みの下での援助協調は活発化。PRGF、CAS、PRSCとPRSPの連携も強化されている。各ドナーは援助における優先順位、コンディショナリティをPRSPに対応(aling)させることを奨励。さらに、援助手続きの簡素化、レポーティング、パフォーマンス評価の調和化も進展中。技術協力におけるコーディネーションの強化も課題。
4.GRIPS開発フォーラムによるコメント
2002年3月中間レビューに比べより論点が絞りこまれ、それへの世銀・IMFによる具体的な支援策が示された。
貧困国が策定するPRSPに対し、(世銀のCAS・PRSCやIMFのPRGFだけでなく)各ドナーが援助プライオリティを対応させる(align)する重要性を強調しており、PRSPを開発戦略と援助協調の中心ツールと位置づける基本方針が堅持されている。
マクロ経済成長については、中間レビューでは貧困削減目標や構造調整政策の枠組みとの整合性が重視されたが、今次ペーパーでは、具体的な「成長の源泉」に基づいたpro-poorなマクロ経済成長のシナリオの必要性が強調されている。特に世銀はpro-poor growthは如何にもたらされるか、という点について各国固有の条件に対する深い理解に基づいた研究の必要性を指摘し、今後2年間は各国レベルでのpro-poor growthと不平等に関する研究に注力するとしている。具体的にはpro-poor growthに関する既存の研究、実務上の経験を集約するためのセミナー、そこでの成果をもとにした国毎のケーススタディ等を実施する旨、明記。
PRSPにおける成長関心のメインストリーム化、「成長の源泉」にかかる国別分析の必要性といった視点は、開発フォーラムとしてもベトナムの事例等を通じて主張してきた点である。他方、成長戦略の中身の議論になると、政府の役割や個別産業への支援の是非・方法などについて、従来から議論のあった欧米と日本(アジア)との見解の違いが顕在化する可能性は大きい。従って、今後は、世銀が実施予定の調査研究・実務プロセスへ具体的なインプットをタイムリーに行えるよう、日本側の体制を整えることが急務と考える。