新ODA大綱「基本理念」大野健一案 2003年4月24日 |
開発途上国では、多数の人々が自由・安全・繁栄を享受できず、自らの責任に帰せられない危険、貧困、傷病、欠乏にさらされている。われわれは、これらの不条理な苦痛を軽減する努力が人類全体の責務であることを固く信じ、平和を愛する我が国が国際社会の連携の中でその実現に貢献することを強く望む。 国際統合が進む世界においては、従来に増して開発途上国の安定と繁栄が世界全体の安定と繁栄にとり不可欠である。われわれはこの相互依存の深まりを認識し、日本の利益を世界の利益に重ねる努力に基づく対外政策のもとで、政府開発援助を上記の貢献を行なうための重要な手段として用いることを決意する。 我が国は最初に先進国の仲間入りをした非西洋国家として、過去1世紀半の工業化・近代化の成果を誇りに思い、また同時にその道程での失敗を深く反省し、人類普遍の知恵および我が国・東アジアの歴史的経験を貴重な糧として、世界に残された開発課題に取り組みたいと願う。 |
ODA大綱の冒頭には数パラグラフからなる「基本理念」があり、これは我が国のODA政策の根幹を謳いあげる重要な文章ですが、上記「・・・見直しについて」はこれについて次のように書いています。
すなわち政府は、「現大綱はグローバル課題のみを挙げているが新大綱では国益も加えた二分論で行く」という方針と思われます。私は生粋のODA二分論者ではありますが、大綱の冒頭に「国益と普遍価値の二本立てでいく」というような露骨な表現は必要ないように思います。二分論は大綱全体からにじみ出ていればいいので、冒頭はあくまで美しいものでよく、また現大綱にあるような、「インフラストラクチャー」「良い統治」「環境保全」といった具体的分野を指摘することも、基本理念としては細かすぎる気がします。 そこで私がイメージする新大綱を具体的に示すべく「基本理念」私案を上に起草しました。これは日本国憲法前文、現大綱、および諸々の議論を参考にしたうえで、以下のポイントをすべて盛り込んだものです。
開発と援助を真剣に考えておられる皆様に提示いたします。議論のきっかけになれば幸いです。 大野健一(GRIPS) |