英国通信


英国援助事情 No.11 「再燃するアフリカ開発熱」

アフガン援助熱も少し下火になってきた英国援助界で、このところアフリカ開発熱が再燃してきた。もともとイギリスは歴史的にアフリカへの関心が高く、政府も国民もアフリカとなるとテンションが高まる。ジンバブエの選挙結果が、朝のBBCテレビニュースのトップになるくらいだ。

5月22日、アフリカ研究で有名なエジンバラ大学で、「アフリカ開発の新しいアプローチ」と題する国際会議が開かれた。参加者は、英国人アフリカ学者、研究者、世界銀行や国連職員約100名で、筆者と何人かのJICA関係者が招かれた。発表者と参加者の話題は、当然ながらNEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ)に集中した。NEPADは、昨年10月、ナイジェリアの首都アブージャでアフリカ各国の首脳が採択した誓約で、貧困削減、持続的開発、世界経済への統合(グローバリゼーション)を目指すため、その前提として、平和と安全、民主主義とグッドガバナンス(よき統治)をあげているところが画期的である。

会議の冒頭にまず南アフリカにあるNEPADの事務局からヌクル事務局長が「アフリカ開発の新しい第一章」というテーマで講演し、NEPADは先進国とアフリカ諸国が真のパートナーとなるための歴史始まって以来の取り組みなのだ、と熱っぽく語った。これに対する会場の反応を聞いていて面白かったのは、イギリス人参加者は、おおむねNEPADを賞賛し、援助国は今後NEPADを強力に支援していくべきという意見が多かったのに対して、肝心のアフリカ人の研究者達からは、「アフリカのリーダーのレベルは低い。」、「これまで幾度もアフリカのイニシャチブや開発計画を耳にしてきたが、どれ一つ成功していない。」、「政界経済に統合された時、アフリカの弱小諸国はどうなるのか。」などと、NEPADに懐疑的な意見が相次いだ。

確かに民主主義やよい統治と言うスローガンは、世界銀行やIMF、西側援助国には耳障りのよい言葉だ。かれらがこれまで、アフリカの債務国に口を酸っぱくして言い続けてきたことをアフリカの指導者達が「自ら」言い出した訳だから支援せざるを得ないだろう。ところが、先のジンバブエの選挙を見てもわかるように、アフリカの人々は、指導者達の誓約が本当に実行されのかどうか不安を感じているのだ。まさにアフリカのリーダーの資質が問われようとしている。

テロ対策が中心議題であった先の先進国首脳会議(G8)とは異なり、6月のカナダのサミットでは、アフリカ開発の議論が熱をおびそうだ。

2002年5月25日 JICA英国事務所長 山本愛一郎



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「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。
 

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