英国援助事情 No.15 「環境か開発か 〜揺れる英国世論」 南アフリカのヨハネスブルグで「持続的開発に関する世界首脳会議」(WSSD)が行われたが、英国では代表団メンバーの人選をめぐって政府内で一騒動あっ た。環境問題の第一人者と目されるミーチャー環境担当閣外相が一時的ながら代表団 のリストからはずされ、環境派と開発派の対立が顕在化したためだ。 英国では以前から参加国185カ国、参加人数6万5000人、経費約70億円という「巨大イベント」を実施することによるエネルギー消費と排出されるゴミ の量を懸念する声が強かった。これを意識したのか、ブレア首相は代表団の人数を100人から70人に減らすよう指示した。 ▽環境閣外相はずしに賛否両論 これ自体は好ましい決定だったのだが、参加者リストからはずされた人の中に、ミーチャー環境担当閣外相の名前があったことから騒ぎとなった。同閣外相は以前から政府の環境政策が十分でないと批判していたこともあり、様々な憶測が流れ、国内の環境保護団体が、この決定に一斉に反発した。 一方、すでに代表団のメンバーに決まっていたクレア・ショート国際開発相は「ヨハネスブルグの会議は環境に関する会議ではなく、持続的開発に関する会議 だ。議題は、環境省ではなく、主としてうちの省が所管する問題だ」(8月12日付タイムズ紙)として政府の決定支持を表明。環境派の神経を逆撫でした。 もともと貧困削減を援助の基本としている同国際開発相はWSSDにおいても貧困問題を取り上げることに熱心であるものの、持続的消費というスローガンのもとに先進国のエネルギー消費の節減を訴えてきたWWFなどの環境保護団体の中には、環境問題が南北問題にすりかわってしまうことを危惧する向きもある。 確かに持続的開発に関する明確な定義や基準が乏しい中で、先進国自体の消費行動に歯止めがかからないまま、貧困削減のために資源が消費されていくことには留意しなければならないだろう。インドネシアのスマトラ島で、貧しい住民が伐採したマングローブの木で炭を作り、収入を増やすことをどう受け止めるのか。 2002年9月17日 JICA英国事務所長 山本愛一郎 |
*「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。 |
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