英国援助事情 No.17 「貧困削減と英国投資家 〜ロンドン プリンシプル」
前号では、貧困削減に向けた英国企業の新たな動きを紹介したが、シティーの機関投資家の中にも南北問題を意識した投資を進めようとする動きが始まった。 ロンドンの目抜き通りピカデリーを南に少し歩いたところにセントジェームス広場という小さな公園がある。その向かいに英国有数の国際問題シンクタンクである「王室国際問題研究所、通称「チャタムハウス」がある。会議のルールとしてよく使うチャタムハウスルールの起源にもなっている。 その研究所で昨年10月、シティーの機関投資家などが集まって、開発途上国で操業する企業に投資する際のガイドラインを練った。 その内容は、企業が、環境問題を起こしていないか、不法な営業活動や雇用を行っていないか、貿易倫理を守っているかなどのチェックポイントで、これをロンドンプリンシプルと名づけた。 このロンドンプリンシプルは、ブレア首相がいち早く支持を表明し、9月にヨハネスブルグで開かれた「持続可能な開発に関する世界首脳会議」でも披露したそうだ。 その発足から1年たった先月、筆者が同研究所の「ロンドンプリンシプル」担当者を訪問し、その後の進捗を聞いてみた。彼は英国航空からの出向者で、貨物倫理と言うテーマの元で、いかにアフリカの貧しい農民が作った作物を英国の市場に運搬するかという研究をしていた。さすがは英国航空だけあって懐が深い。さらに、英国有数のスーパーマーケットであるマークスアンドスペンサーもこのロンドンプリンシプルに参加している。 最初は、投資家のガイドラインでしかなかったロンドンプリンシプルが徐々に現業部門にまで広がりをみせ、また貧困問題にも視点が向いてきているようだ。まだほんの一部の投資家や企業が参加しているだけなのだが、この動きを世界に広めたいと、その英国航空の社員は熱心に語ってくれた。勿論この背景には、企業のイメージアップ作戦もあると思うのだが、このように企業の社員一人一人が貧困問題や途上国問題を意識して営業活動をしていることに敬意を表したい。 次回の出張には英国航空を使おうと思っている。 2002年11月5日 JICA英国事務所長 山本愛一郎 |
*「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。 |
Copyright (c) 2009 GRIPS Development
Forum.
All rights reserved. |