英国通信


英国援助事情 No.18 「英国式アフリカ援助法(その2)〜ITを使った教員訓練」

英国国際開発省(DFID)のビルは、バッキンガム宮殿から通りひとつ隔てた真横に立っている。古い建物だが外観は白亜のビクトリア風で、中はすっかり改装されホテルのようだ。そのビルの一角にアフリカでITを使った教員訓練を企画しているプロジェクトチームの部屋がある。チームリーダーは著名な教育学者で、スタッフは、開発省職員の他、IT関係の民間企業からの出向者である。

アフリカでなぜITなのかと不思議に思う人もいるかもしれないが、交通手段が未発達で、人が自由に移動できないアフリカだからこそITという考え方もある。まさにこのプロジェクトの背景はそれで、2年前にブレアの首相のイニシャチブで発足した。

アフリカが貧困から脱するためには、人々の教育機会を増やすことが重要で、そのためには、教員の質の向上とエイズにより減る可能性のある教員の量の拡大も必要だ。このため、このチームでは、ビデオやCD-ROMを使って、アフリカの中学の先生たちに教育手法の訓練を行うことを企画している。事情が許せば、インターネットを使った双方向の訓練も検討している。

問題は、電源と通信回線の確保だが、とりあえずは、電気と電話線のある主要な町に、リソースセンターを作って、そこで周辺の教員を集めて訓練する予定だ。ルワンダで、パイロットプロジェクトとして無資格の中学教員のための訓練をはじめた。今後はこのリソースセンター方式をエチオピアなど他の国にも広げたいとしている。

もうひとつの問題はハードウエアだ。リソースセンターを作っても肝心のコンピューターなどの機器がなければお話にならない。そこは、英国人の知恵で、コンピューターやソフトの会社に寄付や無償提供を呼びかけている。

これがうまくいけば先端技術がアフリカの貧困を救うという画期的な処方箋になる。アフリカの人々が豊かになれば、将来はコンピューターも売れるかも知れない。イギリス人らしいforward thinkingだ。

11月19日 JICA英国事務所長 山本愛一郎



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「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。
 

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