英国援助事情 No.19 「英国式紛争予防法(その2) 〜ジャーナリストによるジャーナリストのための協力」 以前、国際開発省、外務省、国防省が資金をプールして紛争予防にあたるという英国政府のシステムを紹介したが、今回は、イギリス人ジャーナリストによるユニークな紛争予防活動を紹介する。 紛争下では、公正な報道は困難だ。ジャーナリストも保身のため、権力や武力を背景にした紛争当事者の一方の側に立った報道をせざるをえないこともある。このことが返って紛争を助長する場合もある。また、紛争が終結した後も人権や民主主義などを正しく人々に伝えるジャーナリズムの役割は大きい。 そこで、紛争終結国のジャーナリストに公正かつ正確な記事の書き方、取材の方法などを訓練するためのNGOをイギリスのジャーナリストたちが作った。BBCやロイターなどの現役やOBのジャーナリストたちだ。事務所はアンティークショップなどセンスのよい店が並ぶカムデンに近い地下鉄エンジェル駅のすぐ前にある。 スタッフは58人、民族問題で悩むグルジア、アルバニア、ボスニア、マケドニア、そして最近はアフガニスタンなど多くの国で1200人を越える地元ジャーナリストたちの訓練コースを運営し、彼らに新聞作りのイロハを教えているのである。年間4億円を越える予算は、スウェーデン、アメリカ、イギリスの各政府のほかEUやフォード財団からの資金によってまかなわれている。会長の話によれば、政治的だと見られないため、資金は少ない金額をできるだけ多くの組織から集めたいそうだ。さすがは、ジャーナリストがやるNGOだけある。 もらったパンフレットで参加者の声などを読んでいると、このNGOの評判はすこぶるよさそうだ。そして彼らの自慢は、賞を取ったこともあるホームページだ。そこには、訓練を受けた各国のジャーナリストたちが書いた記事が英語と現地語で掲載されている。自分たちの書いた記事がウェブで世界に流れる。これまで紛争下で苦労してきたジャーナリストたちに夢を与えているのである。ホームページのアドレスは、www.iwpr.netである。 12月12日 JICA英国事務所長 山本愛一郎 |
*「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。 |
Copyright (c) 2009 GRIPS Development
Forum.
All rights reserved. |