英国通信


英国援助事情 No.2 「援助と国旗」

援助には国旗が付き物である。援助国は、援助物資に国旗をあしらったマークを付けたり、建物には自国の国旗を銘盤にして刻み込んだりする。これは、その援助がどこの国のものなのかを相手国民に印象付けるためであると同時に、自国の納税者に対するアピールも兼ねている。

しかし最近この常識を覆すアプローチを英国が提案している。「ゲット・ザ・フラッグ・ダウン」という考え方で、援助国がこれまでのように学校や病院を建てるといったプロジェクト型の援助を止めて、各国が共同で一つの口座にお金を振り込み、相手国のイニシアチブにもとづいて、それを国家予算の一部として貧困削減のためのプログラムを実施するというものである。これをコモンバスケツトアプローチと呼ぶが、こうなると国旗の必要性はもうなくなる。各援助国は、自分達の出したお金がきっちりと使われているかどうかをモニターするだけである。この新しいアプローチは英国が世銀や日本など他の援助国を巻き込んでアフリカ等で盛んに導入を図っている。

英国は全ての国でユニオンジャックを降ろしたのであろうか。いや違う。筆者が今年の2月まで勤務していた東チモールでは、英国は壊れた道路に砂利を埋めるなどの応急処置をした場所のあちこちに大きなユニオンジャック入りの看板を建てていた。国連関係者の中には修理費より看板代の方が高くつくのではないかと揶揄する声もあった程だ。

このことから類推すると、英国はもともと自国のプレゼンスの高いアフリカの旧植民地国では、自国の旗を降ろすと同時に他国の旗を降ろさせた方が有利と考え、アジアなど日本の影響の強い国では、小額の援助でも有効に使うために自国のアピールを行っているのではないだろうか。なかなか英国人らしい戦略的な発想である。

2001年10月11日 JICA英国事務所長 山本愛一郎



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「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。
 

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