英国通信


英国援助事情 No.24 「アフリカを忘れないで!」

どうも国際社会は移り気のようだ。過去10年間世界の関心は、ルワンダ、ボスニア、コソボ、 東チモール、アフガニスタンと目まぐるしく変化した。そして今は言うまでもなくイラクだ。

イラク攻撃が始まったまさにその日の3月20日、ナイロビに本部を置くサブサハラアフリカで保健医療分野の活動を行っている某NGOがロンドンで資金集めのための会議を開いた。 このNGOは、1957年に設立され、チャールズ皇太子が25年間もパトロンになっているという由緒ある団体だ。イギリス、カナダ、アメリカなどが支援している。筆者の勤務するJICAもタンザニアでこの団体の活動を援助している。

1日の会議は、各国の保健衛生関係者や研究者たちのプロジェクトや研究成果に関する発表で始まった。 ケニアの代表は、ナイロビのスラムに住む人々の惨状を訴えた。タンザニアの代表は、エイズやマラリアがアフリカの教育や生産活動に与える深刻な影響について研究成果を発表した。 発表を聞けば聞くほどアフリカの現状と将来が悲観的に思えてくる。人類が戦うべきなのは、イラクではなく、アフリカの貧困とエイズではないかという気さえしてくる。

会議の合間にアフリカの代表者たちに聞くと、皆口々にイラク戦争の影響で、ドナーの関心が アフリカから遠のいていくことを危惧していた。この会議のメッセージは、「アフリカを忘れないで!」だったのだ。

会議も終わった夕刻、チャールズ皇太子が、参加者全員を住まいのセントジェームス宮殿に招待し、一人一人となごやかに歓談していた。アフリカの参加者にも笑顔が戻っていた。

 2003年3月25日 JICA英国事務所長 山本愛一郎



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「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。
 

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