英国通信


英国援助事情 No.27 「イラク疲れの英国がアフリカ回帰?」

イラク戦争が始まって1年が過ぎ、出口の見えない状況が続いているが、もともと産油国よりアフリカの貧困に援助を向けるべきだという意見が根強い英国のNGO関係者の間では、最近「Iraq Fatigue」(イラク疲れ)という言葉が流行っている。

そんな中、先週ロンドン大学で、王室アフリカ学会が主催するヒラリー・ベン国際開発相による「アフリカとのパートナーシップ:2005年」と題した講演会が開かれた。「4年前のちょうど今、エコノミスト誌が、「アフリカはホープレス」という記事を書いたが、皆さんこれは本当でしょうか。まったく違います。今アフリカの人々は、アフリカ連合やNEPAD(アフリカ開発のための新しいパートナーシップ)のもとで、自分たちで紛争を解決し、開発を進めようとする動きがあります、今こそ我々はアフリカとのパートナーシップを進める時です。ブレア首相のプライオリティーはアフリカです。」と講演は冒頭から熱っぽかった。

ブレア首相は、2月末、アフリカの過去、現在、未来を包括的に分析するレポートを作成するため、自らが委員長を務める「アフリカ委員会」の発足を発表した。委員には、ベン国際開発相、ブラウン蔵相、カムデシュ元IMF総裁、そしてアフリカの貧困キャンペーンで一世を風靡したロック歌手のボブ・ゲルドフなどが就任している。この委員会は、イラク問題で窮地に陥っているブレア首相が、英国がG8サミットの議長国そしてEUの議長国となる2005年をにらんで、アフリカ問題で世界をリードしようとする意思の現われと当地の援助関係者は分析する。

ジンバブエの大統領選挙の結果が、朝のBBCのトップニュースになるお国柄だ。イラクよりアフリカを取り上げたほうが世論の支持を得やすいのは理解できるが、その前にやりかけたイラクの仕事をきっちりとかたづけてもらいたいと思うのは筆者だけだろうか。

 2004年4月22日 JICA英国事務所長 山本愛一郎



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「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。
 

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