英国通信


英国援助事情 No.3 「英国式紛争予防法」

 「予防にまさる薬なし。」とはなにも人間の体に限ったことではない。冷戦後世界各地で勃発している紛争を予防するため最近英国が新しい薬を開発した。それは「セキュリティーセクターリフォーム」と呼ばれる援助メニューで、軍や警察の治安部門を担当する組織の民主化、情報公開や軍人の意識改革を行うものである。

10月半ばロンドンの高級住宅街チェルシーにある瀟洒なホテルで英国国際開発省(英国のODAを担当する役所)が主催して紛争予防に関する国際会議が開かれた。筆者を含め国連、OECDや各国の代表約30名が集まった。そこで英国側は、この「セキュリティーセクターリフォーム」の効用を説明した。開発途上国の多くは軍の力が強く、軍は国防だけでなく国内の治安対策を行っており、これが行き過ぎると人権弾圧や武力による鎮圧行為となり、国内紛争の引き金になることが多い。したがって軍の情報公開や組織の民主化、軍人への人権教育などを行うことにより軍の暴走を押さえ、紛争を未然に防ぐことができるというのである。インドネシアなどに専門家を派遣して協カ準備を行っているという。もっとも会議の参加者からは、英国一国でやるより各国が共同したり、国連やDACの場で推進することも必要との声も聞かれた。

軍に対する協カというと、これまでは兵器の供与や軍事訓練が中心であったが、このような平和的な協カも可能になったことは興味深い。今後紛争予防の新しい潮流になるのではないだろうか。

2001年10月18日 JICA英国事務所長 山本愛一郎



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「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。
 

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