英国援助事情 No.6 「世界エイズデーと英国議会」 9月11日以降の世界はテロ対策一色の感があるが、その中にテロよりも深刻な問題が隠れてしまっている。それはHIV/AIDSである。12月1日の「世界エイズデー」にあわせて国連が発表した最新統計によると、世界のHIV/AIDS患者は4000万人、そのうちの70パーセントがサブサハラアフリカの人々だ。患者に対する治療費、そして新たな感染を防ぐための広報啓蒙費などエイズ対策には膨大なお金がかかり、援助なくしてはこれらの国は対応できないのが実情だ。 その「世界エイズデー」を2日後にひかえた11月29日、テームズ川を真横に展望できるビッグベン(英国国会議事堂)のホールでエイズに関心を有する超党派議員のグループがレセプションを開いた。筆者がかけつけた時には、議員、NGO、マスコミ、製薬会社の関係者200名以上が集まり、6月の国連エイズ総会によって設立されたグローバルファンド(エイズ、マラリア、結核などの対策基金)の代表者のスピーチが始まっていた。これによると、このファンドを使って各国のエイズ対策を強化したいとのことだ。 このグローバルファンドには日本、アメリカ、イギリスなどがあわせて14億ドル拠出しており、日本は一度に2億ドルの拠出を表明し、英国は4年間で2億ドルと少しけちくさい。事務局はベルギーのブリュセルにある。ところが、英国はこの事務局に政府職員を出向させている他、英国のNGOがコンソーシアムを組んで、このファンドの運営に意見を言う体制を作っており、出すお金は少ない割にはしっかりと発言権は確保しているのだ。エイズに関心を持つ議員団の圧カも力強い。 この分野でもやはり英国のしたたかさが発揮されている。 2001年11月30日 JICA英国事務所長 山本愛一郎 |
*「英国援助事情」は、筆者の英国での体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。 |
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