2010年2月20日 アメリカ援助事情第22号「アメリカも気になる中国の対アフリカ援助」
一方、援助の分野でも、アメリカの中国に対する目は厳しくなってきた。例えば、アメリカのメディアには、中国の対アフリカ援助に関して、アフリカの資源を収奪するものだとか、アフリカの腐敗した政権を助長するものだというトーンの批判的記事が目立つ。最近では、中国を「ならず者の援助国」(rogue donor)と呼ぶメディア関係者もいるほどだ。 このような事態に危機感を感じたデボラ・ブローティガム教授(アメリカン大学国際学部准教授)が、「ドラゴンの贈り物―アフリカにおける中国の真実」(Dragon's Gift - The Real Story of China in Africa)という本を出版した。 同教授は、筆者のコロンビア大学留学時代からの知己で、若い頃国費留学生として台湾で中国語を学び、1980年代から中国の対アフリカ援助に関心を持ちはじめ、南ア、ナイジェリア、タンザニア、ザンビア、モーリシャス、シエラレオネ、ザンビアなどにおける中国の援助の実態を現地インタビューや企業訪問などを通じて長い間調査してきた、アメリカでは珍しい中国・アフリカ双方の専門家である。 本書において、同教授は、中国の援助哲学は「貧しければ道路を作りなさい」という言葉の通り、インフラ開発を通じて貧困を脱したという自国の経験に基づいており、ひも付きで自国の商業利益に結びつける援助の手法も、中国がかつて先進国、特に日本から受けたやり方を踏襲していると看破している。また、西洋の援助国のように、援助に政治や経済に関するコンディショナリティーを付けないのも、自国の発展の過程は、その国が自由に決めることだという強い哲学を持っていることも西洋の援助国は理解しなければならない、とも言っている。そして、これらを十分に理解したうえで、国際社会は、中国を責任ある援助国(responsible donor)として受け入れる必要があることを説いている。 筆者の見立ては、現代の中国人は実にアンビバレントな人々で、中国を中心に世界が回っているという昔ながらの中華思想に強く影響されている反面、アメリカやヨーロッパなどの先進国が自国をどう見ているかという評判も気になるのである。アフリカなどで世界銀行のプロジェクトを受注している中国企業の中には国際標準の立派な仕事をするところもある(アダムス世銀副総裁)そうだ。 このように援助の分野では、中国独自の考え方も強いものの、他の援助国や国際機関からも学ぼうとする姿勢も感じられる。したがって、我々援助関係者は、いたずらに中国の援助を批判するのではなく、アフリカの発展のためには何が必要で、どういうアプローチがいいのかを共に考えながら協力することも必要ではないだろうか。 以上
山本愛一郎
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