米国通信


このページではJICAアメリカ合衆国事務所長・山本愛一郎氏の「アメリカ援助事情」を掲載していきます。


2008年8月11日 

アメリカ援助事情 第11号 「囚われの国週間」

日本にも「動物愛護週間」(毎年9月)や科学技術週間(毎年4月)など色々な週間があるが、アメリカには、「囚われの国週間」(Captive Nations Week)という一風変わった週間がある。これは1959年、当時のアイゼンハワー大統領がソ連、東ヨーロッパ、 中国などの共産主義国家により表現の自由や人権を奪われた人々とアメリカとの連帯を示すために制定した週間で、毎年7月の第3週が「囚われの国週間」と定められた。

筆者がこの週間をはじめて知ったのは、7月初めアメリカ政府からから送られてきた一通の招待状を読んだ時だ。そこにはブッシュ大統領が「囚われの国週間」を記念して自由 に演説するので是非来てくれと書いてあった。興味深々で7月24日、会場の政府庁舎ロナルド・レーガンビルに行って見ると、そこは大変な警戒だ。二重、三重のセキュリティー・チェックを受けて会場に入ると、既に1000人以上の聴衆がブッシュ大統領の登場を待っていた。

会場総立ちの拍手で迎えられたブッシュ大統領は、まずこの週間の由来に触れ、民主主義によって、これまで、ソ連や東ヨーロッパなどの多くの人々が解放されたこと、最近ではグルジアやウクライナに民主主義国家が誕生したこと、第二次大戦時敵国だった日本とドイツが民主主義のお陰でアメリカの同盟国になったことなどを紹介、民主主義がいかに大切なものかを強調した。

さらにブッシュ大統領は、「民主的で自由な社会にはテロリズムは起こらない。そのためには汚職、病気、飢餓、圧政と戦うことが必要だ。ここにいる援助関係者は、反政府運動家や自由のために戦う人々を助けてほしい。」と訴えた。

会場の最前列に座っていたのは、北朝鮮、キューバ、イランから招待客で、それぞれの国で政治的理由で投獄されている人の家族たちだ。15分くらいの短い演説を終えたブッシュ大統領は 、これらの人の名前を一人一人呼んだあと、「America will stand with you!」(アメリカは君たちの味方だ。)と言って力強く演説を締め括った。

この演説はブッシュ大統領の言葉というより、アメリカ人全体の世界に対する考え方を表すもののように思える。一般に世界の先進国は、発展途上国の経済開発や貧困撲滅を援助の目的を考えるが、アメリカ人は違うようだ。世界に自由と民主主義を広めることがアメリカの建国以来の国是となっているのだ。民主主義 、自由、人権の3点セットが世界の国の平和と人々の幸福を築くと信じて疑わないのがアメリカ人だ。「囚われの国週間」がそのことをアメリカ人に、いや世界の人々に訴えているのだ 。                                              

JICAアメリカ合衆国事務所長 山本愛一郎

 



写真:「観光客で賑わう夏のホワイトハウス」
(提供:山本愛一郎氏)
 

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   *「アメリカ援助事情」は、筆者のアメリカでの体験とナマの情報をもとに書いてい ます。JICAの組織としての意見ではありません。
                部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載 される場合は、事前に御一報願います。

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