2007年12月16日
アメリカ援助事情 第3号 「米軍アフリカ司令部」
このタイトルだけをご覧になった読者は、イラクの次は米軍アフリカ侵攻かと誤解されるかも知れないが、
これは戦闘だけを目的とした司令部ではない。現在アメリカが石油輸入の20パーセントを依存しているアフリカでテロや紛争を未然に防止し、アメリカとアフリカ諸国との安定した関係を構築する目的で
今年の2月ブッシュ大統領が設立したものだ。
具体的には、アフリカ各国の治安関係者の訓練やガバナンスに関する援助を想定している。したがって司令部スタッフ400名のうち25パーセントは文民で、国務省や米国国際開発庁の職員も出向している。
イラクやアフガニスタンなどの反省から、最近アメリカでは、「アメリカの力は何人の敵を殺したかではなく、何人の味方を作るかだ。」(戦略国際問題研究所報告書)という議論の中でソフトパワー外交や援助の重要性が見直されつつある。この米軍アフリカ司令部は一味違ったソフト系の司令部なのだ。
この動きは、国防省と国務省双方からのアプローチだ。ゲーツ国防長官は、11月26日カンサス州立大学で行った演説で、「アメリカ政府は外交や援助にもっとお金を使うべきだ。」と国防長官としては異例の発言をした。
一方アメリカ外交を担う国務省でも、軍との連携により紛争予防や紛争終結国の安定化を図ろうとする動きがある。
5月の終わり当事務所に来訪した国務省復興安定化調整官室のサラザール氏も、米軍アフリカ司令部は
人道支援や紛争予防を主目的としていることを強調し、日本の理解を求めた。
ところが、このアフリカ司令部には大きな懸案がある。肝心の司令部の設置場所が決まらないのである。
現在は、ユーコム(EUCOM)と呼ばれるドイツのシュトゥッツガルトにある米軍欧州司令部に「居候」
している。現在アメリカ政府は、アフリカ大陸のどこかに設置するための予算を要求しているが、民主党議員からは
「お金の無駄遣い。」「本当の目的は何か。」など抵抗感がある。また、ホスト国の候補選びも難航している。
現在のところ正式に誘致を表明したのは、リベリアのサリーフ大統領のみで、アルジェリア、リビア、ナイジェリア、
南アフリカなどは、米軍のアフリカでのプレゼンスに対する警戒感から司令部そのものに反対している。
アメリカのソフト外交の象徴としてスタートした米軍アフリカ司令部も先行きが見えない。
JICAアメリカ合衆国
事務所長 山本愛一郎
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