MDGの「後継ぎ」については、形が見えてきた。「ポスト2015年開発アジェンダに関するハイレベル・パネル」(バンキムン国連事務総長が任命したヨドヨノ・インドネシア大統領、サーリーフ・リベリア大統領、キャメロン英首相を共同議長とする国際有識者による諮問委員会)がその報告書を発表したからだ。現行のMDGは、「2015年までに1日1ドル以下で暮らす絶対的貧困層の人口を半減させる。」という大目標のもと、教育や保健などを中心とした8つの中目標が掲げられているが、同報告書は、それをさらに広げて、食糧、栄養、水、エネルギー、雇用、自然資源管理、平和構築なども含めた12の目標を提起している。この報告書の取り扱いについては、今年9月の国連総会で議論される予定だ。 そこで、EUの台所を預かるEC(欧州委員会)が、「Beyond 2015: towards a comprehensive and integrated approach to financing poverty eradication and sustainable development」(2015年以降の貧困撲滅と持続的開発のための資金調達に関する包括的、統合的アプローチについて)と題するコミュニケ(ECの合意として理事会や議会に向けて発信するメッセージで将来のEUの政策決定に重要な影響を与える文書)を採択・発表した。 同コミュニケは、2015年以降の開発目標は、貧困撲滅(削減ではない。)と気候変動対策を盛り込んだ持続的開発目標の両方を包含したものであるべきという前提に立ったうえで、そのための資金調達を、これまでのODA依存から脱却し、内外の民間資金や徴税や鉱物資源収入など途上国自身による資金調達も含めた包括的なものであるべきだと主張している。その内容は下図のとおりだ。
上の図でECが特に重視しているのは、(B)と(C)のゾーン、すなわち途上自体の資金調達能力の向上と国際民間資金のさらなる動員だ。途上国に対しては、徴税や資源収入の管理の効率化と透明化を求める動きが高まるだろう。また民間企業からの資金動員については、EUはすでにブレンディングという手法で、ODA資金を呼び水にして大規模な民間資金をインフラやエネルギー開発に動員するシステムを稼働させている。(ブラッセル援助事情No.5を参照ください。) こういった流れに対して、途上国側は、先進国の援助資金不足を途上国政府や民間企業に肩代わりさせるとはけしからんという声も出そうだが、現実に先進国から途上国に流れる公的資金の割合が小さくなりつつある現状(2010年に低所得 国(LIC)に流れた公的資金の割合は25%、中所得国への割合は1%)では、開発資金の多様化は、ある意味自然な流れなのだ。 問題は、透明性と国際協調性の高いODA資金に比べて、その他の資金については、それを正確に把握、計測し、調整を図るメカニズムが存在しないことだ。多様化する開発資金全体を俯瞰するグローバル・ガバナンスの構築が実はポスト2015 の最大の挑戦なのかもしれない。
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*「ブラッセル援助事情」は、筆者のブラッセルでの体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。 |