ブラッセル援助事情No.16 「
教育のマクドナルド化がいいのか?教育援助の価値の計り方」 今年のジュネーブの秋は暖かい。9月末だというのに、レマン湖に突き出した埠頭では、日光浴や水遊びをする人がいる。その湖の畔に。歴史あるスイス国際開発大学院がある。そこの教室を借りで、教育援助ネットワーク会議が開催された。通称ノラッグと呼ばれるこの会議は、エジンバラ大学名誉教授のケネス・キング氏が立ち上げた教育分野の援助に携わる専門家のネットワークで、優れた学術研究や学会の開催で有名である。筆者は、教育の専門家ではないが、キング教授の古い友人ということで、特別に招待してもらった。
今回の会合のテーマは、「教育開発のためのデータ革命」で、ヨーロッパ、アメリカ、中国などから約50名の専門家が集まった。背景にあるのは、5月に発表されたポスト2015年開発目標に関する諮問グループ(キャメロン英首相、ユドヨノ・インドネシア大統領、サーリーフ・リベリア大統領を共同議長とし,国連加盟国政府,民間セクター,学識者,市民社会活動家らから選ばれた27名のパネル)が発表した報告書で、そこには、貧困削減のさらなる推進のためには、政策決定に必要な科学的なデータをもっと集めるシステムを構築するための「新データ革命」の必要性が提起されている。 思い起こしてみれば、教育に対する援助は、1980年代は高等技術教育や職業訓練教育が中心だったが、1990年代に、「万人のための教育」という」概念が強くなり人権としての初等教育に援助の重点が置かれた。ここにきて、教育が生み出す成果をお金の価値で計るという考方に再シフトしている感がある。教育援助に対する思想の再転換期を迎えているような気がする。 JICA欧州連合首席駐在員 山本愛一郎 |
*「ブラッセル援助事情」は、筆者のブラッセルでの体験とナマの情報をもとに書いています。JICAの組織としての意見ではありません。部分的引用は御自由ですが、全文を出版物等に掲載される場合は、事前に御一報願います。 |